POKKA吉田が解説!大手パチンコグループの民事再生は業界にどんな影響を与えるのか?

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ガイアの件をここでも触れる

 

ガイアの民事再生というニュース(特に第一報の負債総額)に驚いた人は業界内外に多いが「ガイアほどの大手が民事再生手続きに陥るほどに苦しんでいたなんて・・・」と驚いた業界関係者はいない。もしもいたとしたら、それは業界関係者と呼ぶべき人ではない。それでもその人が業界内企業の従業員というのなら、その人はかわいそうだが「人材」ではなく「兵隊」である。あまりにも無知すぎるからだ。

 

閑話休題。

 

巨額の負債を抱えての民事再生手続きという点、債権者説明会の案内文書の時間に誤記があったという点、債権者説明会の場所が債権者の一社の本社が入るビルだった点、第一報から日が経つにつれて債権額が上書きされていく(増えていく)点、民事再生手続きに至る過程が急だった点、金融機関が担保を実行して株主構成を変更し新役員によって民事再生手続きとなった点、その件について抗議分とも受け取ることができる創業一族(元会長など元株主)の連名での文書が流布された点、など、それなりに話題には事欠かないことは事実だ。1,000億円を超える規模(2,000億円にも迫ろうかという巨額負債であるが、関連企業も合わせて、もはやどこまでが正確な負債総額なのか追いかけることをやめたので知らないが)の法的整理であるからこういうグダグダはつきものなのだろう。一応はプレパッケージ型という、スポンサーが前提となる民事再生手続きであり、Jトラストの50億円、金融機関による38億円のDIPファイナンスをベースにして経営再建を図る、という流れになっている。

 

民事再生手続きというのは、「倒産」と俗っぽく言われる手続きの一種だが、おそらく多くの人にとってニュアンスが誤解されやすい言葉だ。業界企業の経営破綻(遊技機メーカーで近年いくつもあった)のたびに「倒産」というニュアンスで語る人たちと幾度となく話をしてきたが、かなり曲解しているケースが目立つ。

 

たとえば、マルホン工業、奥村遊機、西陣と比べると全然違うわけだ。順に「民事再生」「破産」「廃業」である。

 

一般に民事再生手続きは「倒産」ではない、と言った方が理解しやすいかと思う。事業は継続するし負債も弁済し続けるし、何より字にあるとおり「再生」である。「倒れてない」のだ。むしろ「破産」が「倒産」という昭和的な言葉に近いと思う。破産は文字通り、その時点での資産等は債権者に公平に分配されて終了する。また廃業は「撤退」というべきだろうか。それらをひっくるめて「倒産」と呼んだりするから曲解も増えるのだろう。この3社では唯一マルホン工業は現存しているし事業も続いている。

 

また、民事再生手続きとは「必ず再生できるわけではない」のも当たり前だ。PCSAと合併してMIRAIになる前のホール団体である同友会のPB機を出したことがある大和工業というぱちんこメーカーがあったが2007年に民事再生手続きを申請。しかし民事再生手続きに失敗し同年末に破産となった。

 

ガイアがグループ関連会社も含めて民事再生手続きに成功し経営再建なるか、それとも再建に失敗するかは、これからの話だ。現時点で88億円のファイナンスが前提になっているが、負債総額はその10~20倍あるわけだ。事業を再建するために何をするのか、具体的な計画等が明らかになるまでは見通しはわからない、という感じであろう。既に年末までのガイアの導入予定新台の話も聴こえてきているが、債権者説明会でガイアが主に遊技機メーカーや販社に求めていた取引方法(おそらく分割支払い)に応じたという遊技機メーカーは私の方ではまだ未確認である。現金前払いなら民事再生手続き中でもそうじゃなくてもすべての遊技機メーカーは取引に応じることから、この点、各メーカーの対応も再建の成否に影響する重要点となるだろうし、具体的な再建ありきでないと各メーカーも対応を決めかねるのではないだろうか。

 

正直、創業一族のパーソナリティも含めてだがガイアは、業界内では「大手であり有名ではあったが、中身(営業面の方針、資産など経営状況等)がさっぱり見えなかった」法人であり、かつ、近年は「経営状況が極端に悪化している」ことが業界や金融機関全体で共有されていた。そもそも200店舗まで急増できた理由もよくわからないしそれが85店舗まで減少していった理由もよくわからない。大手となった随分昔からそもそも謎の会社というのが私の印象(そしてそれは普通に多くの業界関係者の印象)であり、特に近年は「メガガイアを出店してしばらくすると他法人に転売する」という、ホールチェーンというよりも不動産ディベロッパーのように私には見えていた法人でもある。

 

そういうところが巨額の負債を抱えて民事再生となったのが今回である。よって、再建の成否で言えば成功した方がもちろん望ましいわけであるが、とにかく成否を問わず、業界内の不良債権処理的に見ると、ガイアについての結論が出るのは長い目で見れば業界にとって好ましい話となるというのが私の見方。もちろん、額が額なだけに債権者にとっては大激震なことは疑いがなく、債権者と債権額によっては、連鎖の恐れも十分にあるから、そこは不安が拭えない。

 

なお、ガイアの件を「業界のイメージが・・・」という人がこのところとても多い印象がある。私に言わせればこれは杞憂だ。完全な杞憂だと言っていいと思っている。

 

過去、新しいところから「業界のイメージが極大に悪化した時期」を列挙する。

 

・3年前の休業要請無視店舗が地上波で報じられ、その後の一連の大バッシング
・東日本大震災直後の一連の大バッシング
・爆裂機問題からの検定取消→規則改正
・社会的不適合機自主撤去

 

<註>近年20数年間には依存・のめり込み、関係がそこに紛れ込む。
・のめり込み問題が地上波で盛んに報じられて社会的不適合機自主撤去となっている(シャッターくぐり競争などの今では考えられない危険な行為がよく地上波で流れていた)
・車内乳幼児放置死亡事件増は爆裂機問題の時期であり、駐車場巡回などの対策は故小野清子氏が国家公安委員長時代に要請したから(要請というか、警察庁に小野氏が雷を落としたと言ってもいいほどに激怒し、焦った警察庁がホール団体に要請するという流れ)だが、それが爆裂機問題終わりの時期である2004年前半のこと
・現在の依存文脈は2016年の末に成立したIR推進法の附帯決議以降、政府の目指すべき方向の一つとなり、2018年7月にギャンブル等依存症対策基本法が成立してからは政府の重要施策に格上げされて今まで影響がある
・ただし依存文脈で業界イメージが悪化しているのは、上記列挙の4点のときのみ。つまり「依存文脈で業界イメージが悪化したのではなく、業界イメージが悪化したときに依存文脈が関連付けされて業界イメージが悪化している」となる。あとは凪とまでは言わないが通常時、影響は軽微

 

今回、ガイアの民事再生を受けて引き合いに出されがちなのが福島のダイエーだ。こちらは2007年の末(実質的には2008年の初頭)から民事再生手続きがスタートし2011年初頭に手続きが終結している。ダイエーショックと言われたほどのインパクトはあったが、インパクトがあったのは金融機関だけ。冗長になるので端折るが、そりゃ、単月黒字営業している法人が600億円以上の負債総額を抱えていきなり民事再生手続きとなれば、「え、あそこがそんなに苦しいほどぱちんこ業界が苦しんでるのか?」と金融機関が考えるのは当たり前のこと。この前年である2006年にはガイアやダイエーに匹敵するだろう負債総額規模(700億円以上と報じられた)で高山物産が会社更生手続きとなっていたことも影響はあっただろう。

 

ただし、イメージは悪化どころか、むしろ影響が市場には一切なかった。2007年から2011年ってのは、ぱちんこなら慶次(雲)が2007年、パチスロなら新鬼武者が2010年のこと。ダイエーショックと呼ばれた期間、遊技機市場は成長一途なのだ。むしろダイエーの民事再生手続きが終結した直後に発生した東日本大震災後にぱちんこ大バッシングが発生している。

 

このことから断言できるが「大手法人の経営破綻による法的整理によって業界のイメージが極大まで悪化した前例はなく、パンデミック、震災、高射幸性、それらに依存問題が紐づいたことによって業界のイメージが極大まで悪化したことがあるのがこの30年間」ということになる。だから杞憂なのだ。ガイアの件で業界のイメージ悪化を心配することは、天が崩れ落ちてくることを恐れた杞の民と同じ、無駄なことである。もっとも債権者にとっては大激震だから、債権者の心配や不安は避けられない。

 

また、貸し渋り等の心配の声も聴こえてくる。が、そもそも金融機関が貸し渋りたかったり貸し剥がしたかった対象に与信管理上陥っていたところは、ガイアの件がなくとも金融機関からそのように取り扱われるわけであり、まだそうならないうちに事業効率化等に励んで信用を向上させるしかない。貸したくないところに貸さない理由を「ガイアの件もあったし」と、私が金融機関の担当者なら今ならちょうどいいので言うだろう。口実にはもってこいだからだ。しかし本当は「ガイアの件は関係なく、今の状態でキミの会社には貸せない」に過ぎないのであるが。

 

ガイアの件はもうこの辺でいいだろう。現時点でこれ以上、エントランスフリーの媒体で何かを発信するつもりはない。私の今の最大の関心事は来週のスマパチのRe:ゼロ、来月のスマパチのエヴァである。

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  • 1:2023-11-16 12:26:08不動産が本業なのではないかと思うパチンコ店多いですよね。日拓リアルエステートなんて名前そのものが不動産屋だし。

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