射幸性について【POKKA吉田コラム #9】
先日、PCSAというホール5団体の一つの団体が主催したパネルディスカッションに登壇した。
そのときのテーマが「今、射幸性を考える」というものであった。
このときのパネルディスカッションの中身が聞いていた業界関係者にとって有益なものだったかどうかは私にはわからないが、このパネルディスカッションのために「射幸性」について、私なりにある程度まとめていたことを、その入り口の話だけ本稿で示してみよう。
「射幸性」という言葉は、最近では警察官僚も使うようになってきたが、もともとは業界にだけ通じる俗語である。
その意味は「客が、射幸心をそそられる程度を示すもの」だ。
射幸性が「高い」と「射幸心をたくさんそそられる」し、射幸性が「著しく高い」と風営法関連法令によってそういう営業はNGとなる。
その「射幸心」とは何か。広辞苑(第六版)には「偶然の利益を労せずに得ようとする欲心」とある。
辞書の種類や法律解説本の中には「それはとてもだらしがない人間がする」というニュアンスも含有することがあるが、ニュアンスはともかく、広辞苑にあった「射幸心」の「構成要素」について3点、解説しておこう。
一般的には「出玉性能≒ギャンブル性」というのが、多くの人の考える射幸性の要素である。
これは字義的には「利益」にかかっており、これを「たくさん欲しい」ということである。
まあ、これは誰でもわかる。
3点だから残り2点を。一つは「労せず」という部分。つまり「楽して儲けたい」ということであり「面倒だったら射幸性は下がる」ということが言えるのだ。
たとえば「目押しが一切不要で、全ての成立フラグがオヤジ打ちなのに完璧に入賞する」というのは「楽」だからNG。
あるいは、ハンドルを固定して手をハンドルから離しても玉が飛び続けるのも「楽」だからNGである。
実際に、警察庁は技術上の規格解釈運用基準でこういう具体的なことをNGとしたり、あるいはさらに踏み込んで警視庁はカイモノ(都内で10年以上前に多く見られた、ハンドル固定+アース切りによって手を離しても玉が飛ぶ状態のこと)にしていたホールを数多く行政処分したこともある。
この「楽」というのは、風営法の体系としては、主に「技術介入性がないこと」を示す。
よって「技術介入性をある程度入れないといけない」というのが「遊技」である。
遊技が遊「技」であるのは、このことからだ。だから「楽できる遊技機(≒技術介入性のないor低い遊技機)は射幸性が高い」のである。
もう1点は「偶然」の部分。要は「欲しい利益を努力して必然的に得たいと思う場合」、たとえばそれは「頑張って働いて稼ぐ」などのことだが、これは射幸性が高いとは言わない。
偶然過ぎる場合、それは「宝くじ」「カジノの各種ゲーム」などはこれに当たるがこれらは合法となって実施されている国の場合は不問だ。ぱちんこの場合は「ある程度偶然に左右されるが、偶然だけで遊技結果が決まるのは射幸性が高い」ということになる。
余談だが、警察庁は今年の6月、釘の問題で全国の警察本部に通達を出しているが、そこには「一般入賞口を完全に殺して、ヘソのスタート入賞ばかりさせる遊技機は著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機(遊技機規制違反)」だと「断定」しているのである。
釘の問題について、風営法に暗い者の物言いがよく目立つが、警察庁は「ベース値を高くしろ」と言ったわけではない。
6月の通達では「役物比率をちゃんと満たせ(これはベース値を高くしろ)」と言いながら「一般入賞口に全然入賞せず、ヘソにばかり入賞する状態は『(確率にのみ結果が委ねられるという意味であろうが)偶然に遊技結果が左右され過ぎ』だから遊技機規制違反だ」と言ったわけだ。
言ったというか「通達」である。よく「組合から通達」なんて言う者もいるが、行政用語における「通達」というのはそんな生易しいものではない。行政組織における「通達」とは「上位の行政機関(この場合は警察庁保安課)から下位の行政機関(この場合は全国の警察本部)への指示」であり、これは「言った」というよりは「政府の一員でもある警察庁の公式な方針」なのだ。
だから「偶然」というのも射幸性という意味ではとても重要なのである。
射幸性というものは、本来このように「かなりヤヤコシイ」体系になっている。
このヤヤコシイものを「一応は具体的に基準にしておこう」ということで、遊技機の性能については風営法施行規則第9条がそのNG例を定めてはいる。が、これは専門知識がないとわかりにくいものとなっている。
ところで、みなさんは「手打ち」のぱちんこを打ったことがあるだろうか。
今や博物館のようなところじゃないと打てないわけだが、今年にも間に合えば新機種として手打ちの機種が出る。
この「手打ち」が「楽じゃなく、技術介入性も高い」ことは打ったことがなくても想像できるだろうが、今の一般的なハンドルの場合はどうだろうか。「これは『労せず』の視点でNGにならないのか?」疑問に思うだろうか。
結論から言うと「セーフ」なのである。
打ち出しの強弱を客自身が調整することができて、止めたいときに止めることもできる上、ずっと握っていないと玉が飛ばないのだからセーフなのだ。だから、カイモノは行政処分された。
同じようにたとえば「MAXBETボタンが搭載されていない機種」を打ったことがあるだろうか。
MAXBETボタンは今や必須だが、4号機の途中までは1BETボタンしかなく、3枚掛けをするために客はBETボタンを毎回3回以上連打していたわけだ。
これもセーフとなっている。しかし、楽だからといって技術介入性は下がらない。
投入金額も4.1秒規制があるから大きくなるわけではない。
実は、遊技機メーカーというのは、射幸性を構成する要素について影響がありそうな新技術を採用したいときは、警察庁や保通協に質問することができるのだが、そこで最終的に警察庁に許容されたものだけが世に出てくる技術となっている。
そして、「過去、セーフと言われても、その後問題が発覚した際はNGとなる」こともしばしばだ。
かなり前の話だが、それでも10年は経過していない話であるが、ぱちんこメーカー組合である日本遊技機工業組合が警察庁にハンドルの件で怒られたことがある。
それは「構造的にハンドル固定をしやすい構造が多い」というものだった。
1?2個の遊技球をハンドル裏側にちょうどはさむことによってハンドルが固定されやすいように作っていたメーカーが当時は多かったのだ。
アースは切ってないから手は離せないが、固定するのは客にとっても楽ということであり、それを「NG」と断じた。
これを受け、構造的に楽に固定することができるものはなくなった。
また、ホール団体にも話は行ったため、今でも「固定ハンドル遊技お断り」というメッセージが店内で見受けられることも多い。
それはこういう話なのである。
ぱちんこ業界関係者だけじゃなく、業界外の者も、射幸性については「労せず」「偶然」の視点が欠落していることが多い。
そんな視点で警察庁の射幸性所管について、物言いするとズレた発言が大変目立つので注意が必要である。
もちろん、出玉性能規制強化というのは、警察庁も重視しているし、業界側も指導を繰り返し受けている。
よって、今年もPSともにあったが、これからも出玉性能規制というのは続くことはほぼ確実だ。
だが、それだけが「射幸性じゃない」のだ。広告宣伝規制違反の指導についても「出玉系のメッセージがなぜNGなのか」というのは、そういうメッセージを受け取った消費者が「楽にまぐれ当たりで儲けることができると思う欲心を、著しく惹起するのではないか」という警察庁の解釈によるものなのだ。
行政の営業者に対する法律解釈であるから、この解釈に異を本気で唱えたければ「それによって営業者が行政処分となったあと、営業者自身が『それは著しいわけではない』と行政処分取消訴訟を提起して、裁判で争う」くらいしか方法がないのである(法治国家とはそういうもの)。
「なんでアレが、あの仕様が、こういうハードが、こういう広告宣伝がNGなのか」という話は、根っこにある「警察庁が射幸性をどのように考えているか」ということを知らずして、本来は語れないものなのである。
まあ、くどくど射幸性について入り口の話を紹介してみたが、本稿の内容だけでも読者のみなさんにとっては初耳の話もあったかと思う。射幸性とは「出玉性能+楽さ(≒技術介入性)+偶然性」で構成されている。
最後に、賭博の話をしておこうか。
賭博とは「二人以上の者が、偶然の勝負によって、財物の得喪を争う」ことである。これを合法にしようというのが「カジノ」だ。
だから「日本版カジノが実現したとき」には「偶然性やギャンブル性など、いわゆる射幸性の規制は原則設けられないもの」ということを言っておこう。
ただし、IR議連の中に頭の悪い議員がいるようで、日本版カジノに射幸性規制を検討しようと言ってた者もいるそうだ。
そりゃ、こんな頭の悪い議員もいる議連が主導しているんだから、カジノ法制化もなかなか進捗は悪いですわなww
私はカジノも好き(海外で少し経験アリ)だが、ぱちんこの「射幸性が規制された中の遊技」も好きだ。
みなさんがもしもぱちんこの射幸性についていろいろ考えたいのであれば、本稿の内容というか、警察庁や風営法上の定義(そしてカジノも考えるなら刑法の賭博の罪関係条項も)を正しく理解して考えてみて欲しいと思う。
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