パチンコにもリミッター!?新規則「コンプリート機能」と規制緩和の関係性
解釈基準改正
先月末に技術上の規格解釈基準が改正されたことはご存じの方も多いかもしれない。技術上の規格とは「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」という国家公安員会規則の別表各号のことを指す。この規格に適合しているかどうかのチェックが型式試験であり、適合した場合は検定を受けることができるという仕組みだ。
遊技機の進化はこの10数年でかなりのものとなっており、技術上の規格に記載されている内容だけでは規制としてカバーしきれないことも多い。このため、警察庁はずいぶん前から技術上の規格の「解釈基準」を用意しており、改正のたびに公表してきた。ただしこの何回かの改正では公表したしばらくのち、警察庁のHPから消えていくことが多く、いまならPDFファイルを取得することができる。かなり専門性の高い内容なので知りたい人がいかほどいるかはわからないが、読んでみたい人は警察庁のHPを参照してほしい(ここに飛んで探せば出てくるが、出てこなくなった場合は削除されていると思っていい)。
今回の解釈基準改正はb時短(遊タイム)の規制緩和とコンプリート機能関連の規定の追加だ。b時短はその発動条件がMLTS(初当たり確率分母)の1.5倍から可能となった。甘デジの場合は150回転から遊タイム発動可ということである(以前は2.5倍から)。
コンプリート機能は、それだけ出たら遊技機が停止するという性能のものだ。現在、既に業界紙の記事でも出ているので具体的に言うと95,000個、19,000枚がその基準値となっている。4円貸20円貸換算だと38万円相当ということになる。この搭載は業界側で義務付けされることとなっており、パチスロがはやくて7月以降の型式試験申請から、ぱちんこは少し遅くて11月以降の型式試験申請から、すべて搭載されることになっている。
コンプリート機能の基準は約40万円で、それを少し下回る程度の数値に設定された。なお、現行法では最大貸料金は4円40銭、22円であり、これで計算すると40万円を超える。このあたり100,000個、20,000枚にしなかったのはメーカー団体のバランス感覚だろう。
ところで、旧規則機には高射幸性遊技機というカテゴリがあった。これはぱちんこの場合は100,000個、パチスロの場合は20,000枚以上の差玉枚数がデータで確認できたら半自動的にリストアップしていくというものであった。ぱちんこの高射幸性遊技機はそのほとんどが399系であり、これは遊技くぎ問題ですべて撤去されていった。パチスロの高射幸性は経過措置の延長分を考慮せず、元の期限で撤去していったことは覚えているだろう。
高射幸性遊技機の問題が懸念されはじめ、問題として顕在化し、さらにその対応に業界が追われていたとき、結果的には「高射幸性遊技機を撤去したら済むという話ではなくなった」ということがある。399内規は319内規になったし継続率規制も復活させていった。5号機は5.5号機や5.9号機という規制になっていったわけであり、その後の遊技機市場にかなり悪い影響を与えたことは間違いない。
今回、コンプリート機能を搭載したことで、当時の基準でも「高射幸性遊技機に該当する」レベルの出玉性能が「絶対に発生しない」ということが担保されることになった。ぱちんこもパチスロも必ずコンプリート機能を搭載するのだから、今後は「旧規則にあった高射幸性の問題は発生しない」ということが言えるようになる。その意味では、警察庁が遊技機性能の規制緩和を判断する上でとても重要であり「ここを緩和しても高射幸性のような性能にはならない」ことが確定しているわけだ。その分、規制強化のトレンドに反転してしまう可能性も減り、業界側も安心できる。だからコンプリート機能を安全装置と呼ぶこともあるが、業界側の思惑としてはこの言葉の方が実態に沿っている。
個人的には遊技する際にコンプリート到達のようなレベルの出玉を目的にしていないため、私にとってはこの機能搭載が義務付けられたところで問題ないと考えている。一方で目的のレベルに近いところの制限、それは20年以上前のCR1種の5回リミットやMY方式での2,400枚規制などだ。どちらも一撃獲得期待値が最大でも5万円前後になるが、これは目的になる金額だ。具体的に言えば、数時間から半日くらい遊技して全然あたらなければ負けることができる金額ということである。その金額以上出ないのであれば取り返せないわけであり、これは遊技動機を著しく棄損することになる。
ぱちんこは出玉性能が向上している面が広く知られているし、パチスロも差枚数方式の2,400枚機の登場でこの点は改善される。そしてほかの規制緩和(決まっているもの、協議を続けているもの等、まだまだかなりある)への後押しにもなることから、コンプリート機能は私は業界内では賛成の立場を公言している。みなさんがどう思うかはみなさんの自由ではあるが、そもそも出玉で40万円ちかくも獲得できるなんて機会は人生において何回もあるものではなかっただろう。
また、多くの場合、遊技機の設計値はそんなに出玉率は高くない。ノーマルゲージで120%とかの設計をするぱちんこなんて存在しないし、設定6でも115%が規則上の上限となっている。この場合、期待値通りに出たところでとてもじゃないがコンプリート到達は不可能である。
設定6の設計は機種により全然違うが、だらだら少しずつずっと増えていくという設計だった場合、この設定6でのコンプリート到達は不可能と言ってもいいだろう。その分、AT抽せんだったりのヒキの勝負で良い方に偏った人だけが「設定5以下」でコンプリート到達できる可能性があるということになる。パチスロは低設定でも勝負になる機種の方が私は楽しいので、設定問わず刺さったらものすごい、という設計が増えてくれることを望んでいる。差枚数方式の2,400枚だから、通常時の吸い込みが激しい方が一撃出玉も増えるというものである。
ぱちんこの場合は継続にリミッターがない設計であれば、単に連チャンのヒキの勝負である。それでも95,000個の差玉を獲得するのは大変困難である。釘が開いているかどうかはこのレベルの差玉に到達するかどうかの確率をほとんど左右しない。これも遊技者としてはこういう設計の方が楽しいと思っている。
ところでスマートパチスロの本格的な申請がそろそろスタートする見込みだ。スマート遊技機は実現時期はぱちんこよりもパチスロの方がはやく予定されており、テスト的に型式試験に初適合したものはスマートパチスロの方であった。まだ最終的な登場時期は部材調達の面で確定したとは言えないが、今年の11月を目指して関係者が調達に奔走している。
スマートパチンコの方も水面下では進んでおり、既存機とスマート遊技機両面での規制緩和案件はまだいくつも残っている。コンプリート機能はそれらを得るための「保険」のようなものとして理解してくれれば私としてはありがたい。
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