暴力団を認める日本社会【POKKA吉田コラム #17】

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元巨人軍の笠原将生容疑者容疑者らが逮捕された野球賭博の事件は、元巨人軍の福田、高木、松本元投手らを書類送検する見込みだと報じられている。

笠原容疑者は既に逮捕されているから送検されるとすると、野球賭博問題でNPBから処分された巨人軍の元投手4人すべてについて事件化する方向となった。

 

もちろん検察が起訴するかどうかはまだわからない。

しかし、笠原容疑者の逮捕容疑が賭博場開張等図利の幇助という点、摘発したのが警視庁組織犯罪対策4課という点が、かなり重大性を示している。

 

賭博場開張等図利というのは賭博場を開いたという罪だ。

図利とは「とり」と読む。賭博場を開いて利益を図ったという意味である。

 

警視庁の組織犯罪対策4課というのは、いわゆる「マル暴」だ。

山口組分裂となってから警察による暴力団壊滅作戦が本格化し、警察庁も六代目山口組と神戸山口組とが抗争状態にあると認定していることから、警察組織の中でも特に多忙な部署の一つである。

そこが事件化に動いているということだから、事件の属性としては、かなり深刻である。いわゆる「暴力団など反社の事件」という属性がついているのだ。

 

これはバドミントンの田児、桃田両選手のケースでも同じである。

こちらは両選手の摘発ということにはまだ至っていないようだが、彼らが出入りしていた錦糸町の裏カジノは住吉会系だったと報じられている。

こちらは1年ほど前に同じく警視庁組織犯罪対策4課が摘発した。

ここでもこのケースは「暴力団など反社の資金源」としての大スキャンダルという属性である。

 

5月1日付産経が報じたところによると、笠原容疑者とともに逮捕された元飲食店経営の斉藤聡容疑者は暴力団関係者と接触を繰り返したということがほぼ明らかになっていることから、これは「暴力団の事件」ということになる。

 

しかし世間様は「ギャンブル」のスキャンダルと捉える人が多い。

実にノーテンキだな、世間様は。

 

ギャンブルの害悪というニュアンスの報じられ方はさほど新しいものではない。

というか、ギャンブルそのものについては多くの人は「悪いこと」「好ましくないこと」だと潜在的には考えているだろう。

お見合いの席で「趣味はギャンブル」と言えば、相手の両親はドン引きすることは間違いない。

 

その他、深刻な依存を引き起こせば、借金、家計破綻などにもつながりかねない。

自殺の原因の第一位は飛びぬけていて「健康問題」がずっと続いているというが、第二位が経済的な問題、つまり「カネの問題」がこれまたずっと続いている。

特に20代から50代までの年代別原因としては、それでも健康問題が第一位であるのはかわらないが、飛びぬけての一位ということではない。

この世代においてはカネの問題も自殺につながっているという分析はあるようだ。

 

ギャンブルは勝てばカネは増えるが、それが確率のゲームであれば胴元が必ず最終的には勝ち、客は最終的には必ず負ける。

そこにいくらかの技術介入性やインサイダー情報が紛れ込む余地があったとしても、客は最終的には必ず負ける。

というか、そういう仕組みでないと、胴元が損をするわけでそれでは胴元は賭場を開くわけがない。

格言とまでは言わないが、よく聞く「ギャンブルに負けない方法」というのは「ギャンブルをしないこと」である。

これはその通りである。

 

ただなあ、世間様はこれが暴力団絡みということをもっと知っておくべきでないのかえ?ホント、日本人はノーテンキだな、と。

 

暴力団関係者が覚醒剤や危険ドラッグを一般人に売っていたとしよう。

今年は清原逮捕という大ニュースがあったから、そういうことが世の中に普通に存在することは皆が知っていることだと思う。

そりゃ、やる方にもいろんな重大な問題があるにせよ、売る方にも問題がありますわな。それが暴力団関係者につながるならなおさらですわ。

 

だからやる方のこと、この場合なら「ギャンブルをやること」についてばかりマスコミが報じ世間様の関心が強まることについては、違和感がある。

まあ、世間様が暴力団について悪い方の三猿を演じたいなら、それはそれでどうぞご勝手にですけどな。

 

もっとも、ギャンブルの問題が報じられてそれがぱちんこに伝染することは必ずしも悪いこととは私は考えていない。

誰がどうみたってぱちんこはギャンブルである。

 

ただ、世間様は、ことギャンブルについてはリテラシーが欠落しているから「刑法で禁止されている賭博=すべてのギャンブル」という誤解を抱えている。

わかりやすく言えば「刑法をわかっていない」ということだ。

ぱちんこは、今のところ「刑法で禁止されている賭博と判断されたことがない」ギャンブルである。警察庁としては「一時の娯楽」という刑法第185条の但し書きに相当するということを基本線にしているが、それをことさら強調することはない。

だから、たまに裁判でそのことが問われることもあるが、裁判所はこの警察庁の微妙な行政運用について、口を出さないような判決を出してきた。

 

さらにいうと、私は警察庁の「強調することはない」ぱちんこは一時の娯楽だから賭博の罪にはあたらない、という考え方について、現場の実態からは少し乖離しているという危惧をずっと持っている。

業界ではそれを「射幸性」と呼ぶが、この射幸性の高い型式が少なからず普及している現状では、「一時の娯楽論は苦しい」というのが一般的な解釈なのではないだろうか。

 

だから、私としては、ギャンブルに関する様々な問題が報じられ、それがぱちんこに伝染したとしても、「ぱちんこは一時の娯楽だ」と業界側が強く発信できるような環境作りにつながれば、それはそれで良いことだと思っている。

もちろん強く発信するためには、そのように「改善」されなければならず、その意味では現時点で強く発信するのはただの「強弁」だ。

これはぱちんこパチスロ両方ともに共通する業界の「宿痾」であり、業界自らこれを改善する能力がない。世間様に対してアピールするためにしぶしぶ改善するというのも一つの手である。

 

とまあ、このように業界の人間としては考えているのだけれど、巨人軍の元選手らの「事件」は、背後に暴力団関係者がいますやんか、と。

田児、桃田両選手は住吉会系の賭場に出入りしてましたやんか、と。

そのことにマスコミや世間様がまあまあ無頓着な現状は、私は次のように解するがいかがか。

 

「日本という国は、法律や条例がどうあれ、暴力団という存在をさほど否定していない」

 

ぱちんこ業界は暴力団排除がとても進んでおり、それが三店方式の起源となった。

1961年大阪でのことである。このときは「暴排(暴力団排除)」と「社会的弱者への福祉(主に雇用)」とを旗印に、大阪府警が容認してそのモデルが全国に普及していった。

 

この暴排モデルも100%普及しているわけではないが、少なくとも暴排そのものについては、驚くほどの成果を出している。

ただ、これは「ぱちんこ業界のケツモチが暴力団から警察に代わっただけ」ということなので、それを「成果」と評価していいのかは、人によっては違うかもしれないが。

 

まあ、シャブなどのドラッグでもギャンブルでも売春でも仕手でも土地建物でも飲み屋のおしぼりでもなんでもいいけれど、「暴力団が絡むケース」の取り扱いについて、日本はかなり寛容だよね。だからこそ代紋をかざして彼らも活動できるのでしょうな。

 

なお、ぱちんこ業界は良い機会だから、どんどん「一時の娯楽」に実態として向かえばいい。

無知な世間様とマスコミを逆に利用して自らできない「宿痾」を治癒させるべく向かえばいいのだ。

無知な者を教育するのは大変だしそんな義理も業界にはない。

ただ単に利用したらいいだけである。

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