パチンコの「いいところ」が見つからない!?【大崎一万発のこれでええんか!? #1】
ここ数年没頭している趣味はランニングとアクアリウムである。どちらも不惑を過ぎて始めたニワカであるが、ドMの自分にはなにかとツボるところ多く、おかげさまで退屈とは無縁の毎日を過ごせている。年齢関係なく続けられるジャンルでもあるし、老後の暇つぶしの心配がないのも嬉しい。
ひるがえってパチンコである。僕自身30年以上もかかずらわっている趣味兼本業であり、だからもちろん好きであることに疑いはないのだけれど、改めてどこがいいのオモシロイの?と問われたら…!? 打ったことない人にプレゼンしてください言われたら…!? いやーこれは難しい。業界に多大な恩義は感じているし、斜陽極まる現状を打開すべく普及推進に努めるのが責務であるが、いざ趣味としてのパチンコを外へ向けて発信しようとした途端、その正体が見えなくなってしまう。こんだけ長いことやってても「芯」がわからない、わかったつもりでもすぐひっくり返る。いったい全体、何なんでしょうパチンコって。
釘調整、換金、依存症、射幸性、脱税問題等々、一般にパチンコの「悪いところ」はよくよく知られている。昨今は民族問題と絡めた誹謗中傷すらよく耳にする。違うよ、誤解だよ、大げさだよ、じゃあ「いいところ」は…って、先にも言ったように挙がらないのだこれが。売上高でいえば20兆円もの産業である。娯楽の王様と言われ不動の地位を(一時は)築いたエンタメである。なのにセールスポイントが見つからない!? 驚くべき現実ではないか。
いや、あるんですよ本当は。大半の人がそこに捕まった部分、すなわち遊びながら(たまに)お金が儲かるバクチとしての魅力である。全国津々浦々365日1万軒のホールで、朝から晩までいつでも小バクチに興じられる。手軽に非日常を味わえる喜び。その肝心なウリを自らPRすることができないジレンマを背負っているのがパチンコ業界なのだ。
もちろん三店方式による換金行為が違法ではないことはファンも含め関係者には周知である。しかしそれと世間の「納得感」とは話が違う。他の業種では許されない、いくつも建前を重ねた上での換金スキームを、良かったね業界努力の賜物だねと社会は許容してくれるだろうか? 暴排の歴史を語って、治安への貢献を評価してくれるだろうか? …いや、無理でありますよね。逆に、ギャンブルが禁止されたこの国で、なんでパチンコだけにそんな強引な手法が許されているのかと疑念を膨らませるのがオチである。
それを自覚しているからこそ、お金のやりとりというオモシロさの源泉を見ないことにして、バクチを娯楽と、ギャンブル性をゲーム性と言い換えて、察してください的な普及活動に終始せざるを得ない。そしてその奥歯に物が挟まったような物言いは、何か「後ろめたいこと」を隠しているかのように写ってしまう。楽しいよ打ってよとニコニコするたびに胡散臭さだけが募ってしまう…。
もうひとつが「釘調整」に係る問題。出玉・利益のコントロールを目的とした釘調整は、明確にやってはならないことになっている。なのに、これまた周知の事実として、全国すべてのパチンコ店が毎日必ず行っているのが現状である。誤解しないでほしいが、僕は違法だから世間がうるさいからやめろと言いたいのではない。むしろ釘調整があるからゲーム、ギャンブル両面において奥深いエンタメ性を獲得したわけだし、調整幅を見切ったりそれに合わせた打ち方を工夫する行為こそが運だけではなく技を駆使する遊技としてパチンコの独自性を担保していると考える。そもそも釘調整を禁じた風営法以前から業としてのパチンコを成立させてきたメシの種であるわけだから、後付けでアカン言われたって知るかそんなのって話である。
が、世間の目はそうではない。当たり前だが、日本は法治国家である。やってはいけないと規定されたことは、どんな理屈をつけたってやってはいけないのだ。これこれこういう経緯がありまして…、調整でなくメンテナンスの一環で…、とかこっちの理屈は関係ないのである。
パチンコ(業界)に対する世の中の目は極めて厳しい。嫌いとまでは言わなくても、信用できる業界だと好感を持つノンユーザーは少数派であろう。その理由はやはり、パチンコを娯楽の王様として、そして巨大産業として成長させたキモである「換金」と「釘調整」、この欠かせない2大要素を、外に向けて堂々と発信・説明できない点にある。正体が見えないのではなく、自ら進んで(望んで、ではないにせよ)隠しているのだ。いや隠しきれてるならまだいい。しかし大きすぎる根っこがモロ出しなのである。そんなヤツを信用できるか!というのは、極めて真っ当な反応であろう。
斜陽とはいえ1千万人もの参加人口を誇るパチンコではあるが、裏を返せば1億人はパチンコをやらないのである。その1億人からどう見えるか、どう思われるか、遅きに失したとはいえ、いい加減に外部視点を基準にしたアイデンティティ確立を具体化すべきではないのか。建前と現実のあまりの乖離を埋めていく必要があるのではないか。
いや、やってますよって? わかる。頑張りは伝わる。でもさ、やっぱり肝心な部分、つつかれると口ごもる現実を巧妙に迂回しながらやってる感が透けて見える。もしくは逆に、世間の感覚を逆なでするかのような理論武装で正当性を主張する。どちらも間違ってはいない、でも誠実な姿勢とは受け取ってもらえないだろう。
参院選を控え、業界初の族議員誕生が間近である。講演会討議資料には「大衆娯楽である遊技産業を守ります」の惹句が躍っている。さて、「守る」とは、具体的に何だろう。何から守るのだろう。どうやって守るのだろう。誰に対して言ってるのだろう。そこをはっきり示してもらわないと不安やイライラは消えない。将来の展望は開けない。業界のみならず、世間からの納得感も伴う活動に期待したい。
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