業界歴29年の大崎一万発が「老害」と呼ばれても若い世代に伝えたい価値観とは!?
当コラムをはじめ、様々な媒体で情報と意見の発信をしている。この仕事を始めて29年、各界の関係者と会ってもシマを見渡しても、今や自分が最年長であることが珍しくなくなってしまった。いやもちろん立場も裾野も幅広く、僕以上の年配者が関わる業界ではあるのだが、演出だの勝ち方だのイベントだの現場に直結するあれこれに、覚えたての頃と変わらぬテンションで口を挟むオッサンなど確かに希少。普通は偉くなるか悟っちゃうかで落ち着いて(あるいはヤメちゃって)、粛々と向き合い方を固めている年齢ではあるわけだから。
しかし前々回でも書いたように、僕はパチンコという存在そのものへの疑問、興味、探究心を未だ捨てられない。消えてしまわれたら困る対象なのである。だから思いを口にする。知りたいことは聞いて回る。異論も申し上げる。うるさ型としてやっていくのがすなわち僕の生き方である。趣味や仕事の枠を超え、腐れ縁もといライフワークとして「何か」「どこか」を見つけ、そしてたどり着きたいがゆえのことで、その果てには結論などないかもしれない。何の、誰の得にもならないかもしれない。儲からないかもしれないし、共感など得られないかもしれない。でも、それでいいと思っている。はるか太古の昔から、人生とは旅であると諸先輩方も言っておられる。銀玉の軌跡に乗って釘の間をくぐり抜け、アウト穴に落ちるまで(運が良ければ大当り穴に入るまで)、カチャカチャチンジャラパチンコの世界を旅して回る……偉人のように含蓄ある物言いなどとてもできはしないが、縁あってこの世界に関わってしまった者としての、自分なりの責任の取り方である。
とまあ、いい歳してこういう活動をしていると、時に老害扱いされることも珍しくはない。うるせえ、関係ない、古い、時代が違う。そんな辛辣な意見も頂戴する。年齢的にも立場的にも、確かにそう見えるよねと承るしかないのが現実なのだが、はて「老害」とはどういうものだろうと考えてもみる。
いわゆる新語であるから簡潔に定まった語義は見あたらないが、一般的には「時代に合わせて価値観を変えられず、自説こそ正論と信じ込んで他を阻害するふるまいを見せる年長者」とでもなろうか。
んー確かに、今や曲げられない信念はあるし、古き良き時代のパチンコに郷愁を感じることも多々の毎日である。萌え台はよくわからない、設定6をツモりに早朝から並んだりもしない。一般的な(こと若い世代の)打ち手とは異なる価値観で台と対峙している場面も確かに少なくはないのだが、じゃあ勝ちたくないかといえば当たり前だがそんなことはないわけで。そして楽しく打ってたいわけで。だから全ての打ち手と同じくボッタクリ店には改心してもらいたいと考えているし、つまんない台を作るメーカーには猛省を促したいと憤っている。パチンコを遊ぶ理由として普遍的な「常識」は、若い人たちと(そしてご老人とも)何ら変わることはない……にも関わらず、老害とはこれ如何に?
思うにこれは、パチンコそしてパチンコ業界という対象をどう見ているか、何を求めているかの違いなのだろう。先に申し上げたように、僕にとってパチンコはなくなってもらっては困る大事なものである。もちろんすべての関係者にとっても同様だろうが、では打ち手の皆さん、勝てないパチンコになっても、変わらず「なくては困る」と言えますか? 業界人の皆さん、金が稼げない商売になって「なくては困る」と言えますか? いやそれは……という人も少なくないと思う。しかし今の僕は、恥ずかしげもなく「困る」と言える。多くの人にとってパチンコとはお金がつなぐ縁、僕だってきっかけはそうだったし、今も居座っているのはメシが食えているからに他ならないが、いつの間にか主従が逆転し、勝てなくても仕事が減っても(ええ、コロナ禍以降はご期待通りに激減してますね)、なくなっては困る主役に収まってしまったのである。お金じゃない部分に惹かれてしまったゆえの「悲劇」と言えなくもない。
普通にパチンコが好き、という人とは、この価値観の相違は簡単に埋められないものだとは思う。そりゃそうだ、意味がわからないでしょう? 勝てない、つまんなかったらヤメればいい。儲からなかったら別の事業に転向すればいい。それが当たり前である。ほんと、うまくやっている後輩ライターを見ていると、名前を売る腰掛けと割り切ってりゃ良かったと後悔することも少なくない。でもなぁ、紆余曲折ありながらここまで付き合ってしまったわけだし。情なのか、愛と言っていい感情なのか、自分でもよくわからないけれど、捨て置けないのである、パチンコを。
だから、今の僕は打ち手に対して、「負けろ」と言う。少なくとも負けても納得できる、そして過負担にならないパチンコとの関係性を築けと言っている。だって客が負けないとパチンコは存在できなくなるから。意志に反して負けてる人ばかりじゃ嫌われ者になってしまうから。そしてパチ屋には、利益優先や事業拡大にばかり邁進するなと言っている。ビジネスで関わっている企業に対し、クソ青臭いナンセンスな物言いだが、でもパチンコ事業者にとっての最優先が成長でありお金であり続けるならば、もう構造的に打ち手は支えられないフェーズに突入している。そして同業のメディア関係者には、ぶら下がるだけでなく弱った親木を支える活動もせよと言っている。それは決して、提灯を振り回したり太鼓を打ち鳴らすだけではないはずだ。
そんな理想論やパチンコ原理主義的な暑苦しさを老害感として受け取る人は少なくないだろう。もちろん僕なりに「パチンコ再興」へ与すると信じての主張なのだが、具体性を伴わない妄想と切って捨てられるかもしれない。しかし、お金から離れてパチンコを考えないと、ギスギスするばかりじゃないですか。構造的に避けられない衰退の責任を、客、店、メーカーで押しつけ合うことに意味などある? まずは新時代のスタンダードとして、旧来の価値観を反転させましょうよ、そして共有しましょうよ! そう申し上げたいのである。僕は新しい価値観でパチンコを考えたいのだ。パチンコがなくならないように。考え方をアプデできてないのは君たちの方だ!
……みたいなことを言うと炎上しそうだからやめとくけども。
そんなわけで、沈没船と一蓮托生を決めたからには、逃げ出すネズミを食らいながらでもしがみつく所存である。いや、もしかしてを諦めたわけではない。ST最終回転のミラクルだって「よくある」のがパチンコである。ロマンを捨てる時、それはパチンコと縁を切る時である。
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