老舗パチンコメーカー西陣が72年の歴史に幕…大崎一万発が同メーカーへの想いを綴る!
3月1日、老舗パチンコメーカーである西陣が廃業を発表した。72年の歴史に自ら終止符を打ち、遊技機事業から完全撤退との大悲報である。西陣と言えば、かつては平和、SANKYOと並んで桐生三大メーカーの一角を担い、創意工夫を凝らした役モノ機で市場をリードした巨星だった。さらに、業界視点から見るならば、補給・シマ設備のオートメーション化に尽力し、近代パチンコホールの基礎を作り上げた立役者でもあった(※この点を触れずに西陣廃業を語るのはけしからんとPOKKA吉田氏からお叱りを賜ったことを付記しておく)。
パチンコの歴史がまたひとつ幕を閉じるわけで、オールドファンとして万感胸に迫る思いはもちろんある。しかし反面、一種当然に受け止めている冷静な自分もいる。残念ながら、西陣の、遊技機メーカーとしての輝きはとっくに失われていた。時代をキャッチアップできず、プレイヤーからもホールからも「あってもなくても……」な、印象の薄い存在になっていた。寂しさを感じているのは、かつてを知るアラフィフ以上の世代だけだろうが、そんな僕でも、ショックと言うより「しょうがない」「ですよね」、そんな諦めの勝る感慨である。
もちろん僕にも、「チクショー、なんでこんなことに」との悔しさはある。誰かの、何かのせいにしたい気持ちもある。が、とてもじゃないが僕は、八つ当たりをできるような立場にはない。西陣の台なんて、たまに打つのは桃キュンぐらいのもので、ほとんど視野に入っていなかった。まさに、あってもなくてもどうでもいいメーカーだった。こんなことにしたのは誰のせいだ!? って、打たなかった客である自分のせい以外の何物でもないわけで、感謝の言葉と共にごめんなさいを申し上げるのが惜別においての筋であろう。
とか言いながらも、でもここ10年ほど(いやもっと長くかもしれないが)、西陣の台がパッとしなかったのは事実である。他社から大型タイアップの話題機がバンバンリリースされる中、オリジナル版権を中心にした勝負が奏功しなかった。端的な例が『花満開』シリーズである。1993年に販売された初代花満開は、CR機の普及に多大な貢献をした大ヒット爆裂連チャン機。後のスペック規制(社会的不適合機問題)でその過激なゲーム性が継承できなくなり、美麗グラフィックをアピールした新生・花満開シリーズを10機種近くも展開したのだが、いずれも期待を裏切る結果となり、シリーズを重ねる度に話題性も低下していく残念な経緯を辿った。2021年には「最後の花満開」を謳った『花満開月光 THE FINAL』がリリースされたのだが……さて皆さん記憶に残っていますか? 僕はギリギリ覚えていたが、打ったのは1回か2回。悪い台とは思わないが、積極的に選ぶ理由もない、「ファイナル」にも関わらず、今の西陣を象徴する印象の薄い台だった。打たなかった自分が悪いとは申し上げたが、打ちたくなる台を出してくれなかった責任はもちろん西陣にあるんだよなぁ(涙)。
今さらどうこう言っても意味などないのだが、ここに至って思うのは「どうして役モノへのこだわりを捨ててしまったのだろう」ってことだ。西陣と言えば役モノ。魚群といえば海物語、と同列に語れる「お約束」……だったのは、はるか大昔のことになる。CR機がパチンコのゲーム性を激変させる前夜、85〜92年ごろの役モノ機全盛時代。西陣は夢とアイディアが詰まった宝箱のような羽根モノや権利モノを毎月のように送り出していた。見たことのない仕掛けと意外性に満ちたの玉の動き。実際に体験するまで予想できないゲーム性。二度と再現できない、刹那のストーリー。「これこそがパチンコなのだ〜!」と絶叫したくなるような(笑)、しょーもないけど他では絶対に体験できないゲーム感に魅了され、病膏肓に至って40年近くもこんなことをやっている。大崎一万発の原点は、おジョーズランドであり、魔界組であり、桃太郎であり、スーパーブラザーズなのである。
アムテックスのトキオデラックス、大一の天下一閃、マルホンの天龍、SANKYOのスーパーコンビ7500。喝采の役モノ機が登場するたびに、西陣はどうした、次は西陣がやってくれる、そう信じ続けたが叶わなかった。無念ではあるが、これも時代の流れである。
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