「その時何が起きたのか」アノ選挙を振り返り、想像する【大崎一万発のこれでええんか!? #2】

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 尾立源幸候補の参院選が終わった。業界が堂々と担ぐ、初の族議員誕生はならなかった。僕は公示後から、自らの意志で支持表明して候補を応援させてもらった。立場を省みず偉そうな講釈も垂れたし、SNSは連日選挙絡みのツイートばかりで不快なフォロワーも多かったと思う。エンドユーザー各位に大きな混乱を生じさせたこと、そして共感し応援してくださった皆様と尾立候補に、自身の力不足をお詫びします。申しわけありませんでした。

前回の当欄で、「間近である」と書いたとおり、僕自身は充分に可能性アリと考えていた。しかし、意外すぎるほどに業界票が集まらなかった。今回業界から投じられたと推測できる票数は約5〜6万。就業人口20数万人、家族を含めれば100万人近いとされる業界規模を考えると、どうにも少なすぎる数字に思える。

知名度が低い、初の選挙戦に業界が不慣れ、いやそもそも業界向けの具体的公約がない(!)という特殊事情はあったにしても、全日遊連・日電協・回胴遊商の業界3団体が総掛かりで戦う選挙戦である。フロントマンとなる国会議員を業界が抱える意義は、働く者には無理なく理解できるロジック(のはず)である。何か大きな変化がないと厳しい共通認識は言われるまでもなく醸成されている。僕の取引先業者やホールも、公示前からこぞって支持を表明し、ジリ貧の業界状況から救ってくれると期待していた。知らないと言う人はいても、こういう理由で彼はダメだと言う声はなかった。応援セミナー、演説会は、回を重ねるごとに盛り上がりを見せる。SNSを通じ、エンドユーザー間でも知名度は上がっていく。行けるんじゃないか、そんな空気も(少なくとも僕の周辺では)漂っていた。

なんでだろう? と、マリンちゃんも大好きビッグバイブから昇格した魚群がまさかの「ゴメンねー」に終わったその時、僕の頭にもある考えが過ぎった。ここからは想像の話である
尾立候補の公約を読み解く、すなわち後援組織である業界団体の提言には、「適切な遊技機価格の実現」がある。台価格が高いからホールは苦しい。開発費のかさむ新機能競争はメーカーにも負担である。歩み寄っていい関係にしませんかと読み取れる、反対しようのない「業界向け公約」が明記されている。業界人なら、乗らない理由などないはずである。

が、しかし。もしかして、台の値段を下げたくない、いやむしろドーンと!上げたい人たちがいるとしたら…?
そんなバカな。いやいや。もちろん価格が上がった分、魅力的な付加価値がつきます。それは、業界に残った最後の負の遺産、釘調整を追放する設定管理式遊技機。シマ設備や人件費を大きく減らせるスタンドアローンの完全循環システム。営業データは監視、集積され、ゴトばかりかホール側の不正もシャットアウト。各種個人認証システムと連動し、市場データ収集のみならず、過剰遊技者を早期特定して依存症対策もバッチリである。
パチンコを根底から作り替える、満塁サヨナラ逆転ホームラン。お上のメンツを潰さなかった見返りは、もちろん皆さんお待ちかねのアレ。肝心の玉も、バンバン出ちゃう、かもしれない。夢想ではないよ。技術的には、十分に可能とするところに来ているのだから。

しかし。夢のキカイは高いよ、と。メチャクチャしますよと。買えない? あーごめんなさい。そういうお店さんはどうぞ畳んでください。この先の業界は、みんなが残れるほど甘くはない。だからついて行けないホールは申し訳ないけど振り落とす。そして、決心と資金力のあるホールだけで、まったく新しいパチンコの未来を切り開く……。想像してみよう。自分が大成功しているメガチェーンの経営者だったら、投入を機に市場を占有したい大メーカー社長だったら、あるいは業界のイメージとコンプライアンス向上を願う、志高い業界人だったら。「台の価格をドーンと!」上げる案にベットしたくなる、のではないだろうか。そして、計画を妨げかねないイレギュラーな事態=降って湧いたような族議員誕生は、(少なくとも積極的には)望まないはずである。

昭和から打っている僕は思う。新パチンコが業界の悲願を叶える夢だとしても、そんなのアリなのだろうか? パチンコが纏っている、ええ味わいのあれこれをそぎ落とされたように感じる。しかし、おそらく、それでもスタートチャッカーに入れば数字は動く。揃ったら玉が出る。役モノに入ったら(それが映像なのかもしれないが)玉がクルクル回る。これがパチンコじゃないって? いやパチンコですね確かに。僕みたいなめんどくさい、そして先行きにも期待できない少数客以外には。

僕が尾立候補を応援した理由のひとつは、既存のホール、特に中小ホールが自由度の高い営業環境でアイデアや出玉競争をして、活性化するビジョンが見えたからである。いろんな台やいろんな店から選んで打てる環境は打ち手側にもメリットは大きい。そんな中で、時代に合ったエンタメを提供できるホールが支持を得る、健全な市場競争が促進される。僕自身、今の形のままのそこそこ胡散臭いパチンコを打って(もちろん活性化での出玉アップは期待して)、同時に仕事も続けたいわけで、業界に一石を投じたい改革派のような物言いをしつつ、その実は守旧派と言うべきかも、と己を見つめ直したりもした。

と、ここでまたもビッグバイブが発動した。マリンちゃんは大喜びだろうが、僕には再び天の声が聞こえた。大崎くんね、きみ考えすぎなんだよ、と。確かに店は減りますよ。でも新パチンコを展開できるホールは、淘汰を勝ち抜いたいずれも優良企業ばかりです。わかりました、我々は現在より薄利で商売することをお約束しましょう。というか、機能上、ボッタクリできない台しか作れなくすることもできるんです。どこのホールで誰が打っても公明正大な遊技機を、負担を抑えた適切な遊技料金で楽しんでもらえる環境の実現。何か文句はおありでしょうか? これこそ信頼回復のカギではありませんか? さて、業界を支えてくれるいいお客様、未来につながるお客様が望んでいるのは……。

今を楽しむエンドユーザーの皆さん。改革派と守旧派(どっちがどっちかはご自身の価値観で判断してください)、あなたがベットするのは、どちらが思い描くパチンコの未来像だろう。今回の魚群は、当たってくれるのだろうか。

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