クリスマスは今年もやってくる、元パチプロY君との悲しかった出来事を消し去るように…あしの少年が出会った驚愕のクリスマスパーティーとは!?

クリスマスは今年もやってくる、元パチプロY君との悲しかった出来事を消し去るように…あしの少年が出会った驚愕のクリスマスパーティーとは!? eyecatch-image

幼少期のクリスマスに悟ったこと。元パチプロ・Y君の思い出

 

俺の友達にY君という男がいる。今でこそ教育関連の職に就いて嫁さんもいるけど、実は過去、彼にはパチスロで生計を立てていた時代があった。俺も当時は学生をしながらパチスロばっかり打ってたので、必定、一緒にファミレスで夜食を食べつつ収支を報告しあったりすることも多かった。そんな中で一度、彼が何かの台で5,000枚くらい出した時、それなりに高級な焼肉を奢って貰った事があった。当時は収支がついた方が奢るのが当たり前でそれこそ奢ったり奢られたり、持ちつ持たれつで上手いことやってたものだったけど、言ってもまだ二十代前半の青年だ。大体はファミレスか居酒屋が関の山で、奮発して焼肉へ……というのは珍しかったのでよく覚えている。


そしてその時、佐賀牛の希少部位を七輪で焼きながら彼が放った一言。それが「俺らもいよいよここまで来たな」だった。
……さて。その時俺がそのセリフをどんな感情で聞いたか。それが今回のテーマである。繰り返すけど「俺らもいよいよここまで来たな」である。ただでさえダサいのに、しかもパチスロで勝ったお金で焼肉を食いながらだ。ちょっとそこだけは胸に留めて読み進めて頂けると幸い。果たしてそれを聞いた俺の胸に去来した想いとは。


今回はそんな話です。いくぜプレス!(掛け声)

 

 

クリスマスは今年もやってくる。

 

Y君と俺の出会いは小学生時代に遡る。といっても、小学校は実は別だったりする。俺は当時ほぼお婆ちゃんに育てられていたのだけど、彼女は当時保険の外交員として現役バリバリで働いてたので、まだ幼き俺は学校終わりにいわゆる「学童保育」の施設に預けられ、そこで数時間を過ごすことになっていた。天神町という山の上にある施設で、日によってメンツは違ったけど、そこには両親共働きだったり片親だったりする少年少女が、毎日1ダース以上は居て、各々本読んだり遊んだりして気ままに時間を潰していた。ほとんどは幼稚園児くらいの子だったのだけど、俺は確か小1までいた。んでY君もそうだ。古株である。なんかあんまり覚えてないけど、紙飛行機作って遊んでる間に意気投合した。どっちが遠くまで飛ばせるかやろうぜ! みたいな事をやってたのだけど、二人にとっての紙飛行機の発射台はジャングルジムの一番高いところだった。


登って、飛ばす。拾って、登る。


それを繰り返すうち、俺は一度足を滑らせて転落してしまった。脳震盪である。人生で初めて意識を失った。時間にしてたぶん30秒くらいか。慌てた先生が駆け寄って来て俺の肩を揺すった所で意識が戻った。驚くべき事に、Y君は普通に飛行機を飛ばしてた。救急車が到着して俺がタンカで運ばれてる間も、彼はずっと紙飛行機で無邪気に遊んでいた。


あ、コイツ人の心がねぇな。と、子供心にちょっと思ったものだ。


まあ何にせよ、Y君とは小学校が違うけどそれで何となく仲良くなり、学区は違うけど家もそんなに離れて無かったので、ちょいちょいお互いの家で遊ぶようになったわけだ。そしてあれは小3の時だ。クリスマスパーティやるから来いよ! と呼ばれたので、意気揚々と参加表明をしたのである。「今日はY君の家でクリスマスパーティやるから遅くなるかも!」とお婆ちゃんに言ったら、なんか1,000円くれた。俺はそれで文房具屋に行ってペンと消しゴム買って、ちょっとオシャレな感じの袋に入れて貰った。せっかくパーティやるんならプレゼントくらい用意するのが礼儀だろうなと思ったからだ。


さて。ここから先はY君の家庭についてちょっと触れねばならない。Y君の家は大家族だった。なんか知らんが子供が一杯いた。何人居たかよく覚えてないけど、6人くらい居た気がする。学童保育施設にも弟と妹が来てたし。もうちょっとちっちゃい、赤ちゃんレベルの子もヨチヨチ歩きの子もいた。子沢山である。そして田舎の子沢山というキーワードから簡単に連想できると思うけれど、彼の家はいい感じで貧乏だった。


Y君は長男だからまだ良いとして、2つ下の弟は袖がドゥルンドゥルンになった服とかをよく着てた。お下がりである。しかも問題なのはY君には1つ下の弟も存在する事だ。つまり、2つ下の弟が着てる服は兄二人を経由したお古である。もうガビガビのドゥルンドゥルンだった。そして傷んだ箇所には平気でアップリケとかでツギがあてられてた。言ってももうあとちょいで平成が到来する時分である。俺はリアルでアップリケでツギがあてられたトレーナーを見たのは後にも先にもY君ちの弟が着てるやつだけなのだけど、とはいえ俺も「貧乏」という現象の意味を良く分かってなかったので当時は「何か楽しそうだな」くらいに思ってたものである。


そしてクリスマスの日、俺は貧乏の本当の恐ろしさを知る事になるのだった。

 

 

ベビーチョコもっとよこせよ!!

 

今となっては、俺は「はじめてのおつかい」とかで凄い泣く。オッサンになるとアレは全員泣く。子供は無条件で可愛いし、どことなく哀れないきものだからだ。なのでここから先の話もちょっと切ない感じで思い出されるのだけど、敢えて当時の気持ちをそのまんま書こうと思う。


プレゼントのペンと消しゴムが入った袋をぶら下げた俺は、待ち合わせ場所の公園にたどり着いた。冬の夜の到来は早い。マジック・アワーから一足飛びで宵闇が近づく、砂利道の先。ハーメルンの笛吹に誘導される隊列の如きシルエットが浮かんでいた。先頭には一番大きな影。掲げるように何かを持ってる。わらわらと群がる、それより小さな影たち。近づくと正体が見えた。先頭の影はY君で、後に続くのは弟達だ。見ると、Y君が掲げているのはベビーチョコの容器だった。


「ベビーチョコいる人ー!」
「はーい! ちょうだいちょうだい!」
「あげないよー! おいでー! あはは!」
「まってー! ちょうだいちょうだい!」
「あはは!」


やがて立ち止まるY君。


「ちゃんと並んでね! はい! 手ぇ出して!」
「やったー! ちょうだいちょうだい!」


Y君と目が合う。思わず立ちすくむ俺に、Yくんが手招きする。


「ひろしくんも! 並びなよ!」
「え……俺? あ、ベビーチョコ……。うん。食べる」


ちっちゃい子どもたちに混じって並ぶ。弟や妹が差し出す両手のひらに、ベビーチョコを配るY君。やがて俺の番が来た。配られたベビーチョコは2粒だった。困惑して周りを見る。弟や妹達は、2粒のベビーチョコをとても幸せそうに食べてた。あれ。と思った。俺のうちもまあまあ貧乏だったけど、ベビーチョコは1ケースを1人で全部食ってた。というか、容器に口を当ててザザーッと食うので、粒とか良くわからない。粒単位で頂くのは初めてたったので、逆に食べ方が良くわからない。


「チョコレート美味しいねぇ!」
「甘いねぇ!」
「へへ! 楽しいねぇ!」


盛り上がる兄弟たち。そのまま固まる俺の前で、さらに事態が動いた。Y君がベビーチョコの蓋をカチっと締め、そのままポッケに入れる。


「はい! 今日はおしまい! 明日またあげるからね!」
「はーい!!」


嘘だろ。と思った。ベビーチョコって日を跨ぐのアリなん、と。ちなみに今、俺はコレを書いてて凄い切なくなってるけど、当時の俺は「もっとベビーチョコよこせよ!」としか思ってなかった。そんな中だ。公園の隅。ベンチに女性の姿があった。Y君の母親である。ベビーチョコの配給の様子を目を細めて見守っていたが、やがてゆっくりと立ち上がり子供たちに近づいた。


「はい。もうすぐ晩ごはんよ。みんな。帰るからねー!」


Y君がお母さんの傍らで、見上げるような姿勢で言った。


「お母さん、今日のご飯は何?」
「ふふ。今日はねぇ、クリスマスだし。ひろしくんが来てるから、ごちそうよ」
「えー! ごちそう!? なに!」
「なに! なに! お母さん教えて!」


盛り上がる子どもたち。ごちそう。そそる単語だ。しかもクリスマス。チキン系の何かは鉄板として、なんだろう。ピザとかそっち系か? 鍋もありかもしれない。いや、すき焼きか? 母が、Y君の耳元に口を寄せる。何事かを呟く。Y君がぴょんと跳ねた。


「えー! ホントに! やったー!!」


こっちをチラっと見ながら母親に「ごちそうだね!」と言うY君のリアクションを見て、すき焼きだなと直感した。間違いない。この喜びよう。家庭でできるごちそうオブごちそう。イコールすき焼きだ。俺もちょっとテンションが上がる。子どもたちも同様だったようで、皆が一斉にぴょんぴょん跳ねながら笑っていた。俺もなんだか、一緒に飛び跳ねたい気分になった。

 

──やれやれ。最高のクリスマスになりそうだぜ!

 

 

小麦粉&小麦粉。そして小麦粉。

 

結論から言おう。出された料理はミートソースのスパゲティだった。


サラダやスープなどのサイドメニューは一切無し。ただのミートソースだ。しかもミートソースが梅干しくらいの量しか載ってない。ほぼプレーンなスパゲティだった。うそだろと思った。まあスパゲティがごちそうなのかどうかはおいといて、このミートソースの量はちょっと信じがたい。あり得ないくらいの少なさだった。刹那に「あ、これは無くなったら追加されるパターンだ」と判断して一気にミートソース部分を食う俺。あッ。と、誰かが叫んだ。母親だった。どうやら、ミートソースの追加は無いらしかった。見ると、Y君とその兄弟たちは、まずミートソースをまんべんなく引き伸ばして麺と混ぜる所からスタートしている。


「だめじゃない。ひろしくん。ミートソースがないと味がしないでしょう。ちゃんとこうやって、混ぜてから食べないと!」
そのミートソースの絶対量が少なすぎる事はさておき、母親が小さな妹だか弟だかよく性別が分からん小さい子を指差して言う。ほら、こんな小さい子でも出来ておるぞと、その仕草が伝えてきたのだけど、もはやミートソース部分を一口で食べてしまった俺にはどうする事もできなかった。そしてその後、マジでミートソースの追加は無かった。プレーンのスパゲティを泣きそうになりながら食う俺。お残し厳禁のムードが漂っていたからだ。その証拠に、上手く混ぜる事が出来なかった子が何人か、もちゃもちゃとプレーンのスパゲティを食べている。


プレーンのスパゲティ。これ一回食べてみると分かるけど、超不味い。ただの麺状の小麦粉である。せめて塩が欲しかったけど、そんな雰囲気でも無かったので、そのまま水で流し込みながら何とか平らげた。


この時点で「俺んちは貧乏だと思ってたけど、まあまあ恵まれているのかも知れない」と薄々分かってきた。見れば、Y君の家は部屋の中もなかなかパンチが効いていた。今まではなんとも思わなかったけど、プレーンのスパゲティをおみまいされた今となっては、部屋の土壁にシミが浮いてるのも、なんとも貧乏くさく見えてきた。


兄弟全員。そして俺もスパゲティを完食したところで、Y君が何やらタンスから取り出した。トランプで遊ぼう! 高らかになされたその宣言で、兄弟たちが盛り上がる。


「トランプだ! トランプ!」
「わーい! 遊ぼう遊ぼう!」


トランプ。嫌いじゃない。この人数だと大富豪とかになるのかな? と思って配られたカードを見て俺はまた沈痛な気持ちになった。厚紙に鉛筆で書かれたマーク。トランプは手作りだった。ジョーカーと思しきカードの図柄には当時流行っていた

「ケロケロケロッピ」が描かれていた。
「ひろしくん、やったことないからルール教えるね!」
「何やるの?」
「いつもやってる面白いやつやるよ! 面白いよぉ!」


説明された謎のゲーム。小さいこどもでも遊べるよう、すげー簡単なルールだった。よく覚えてないけど、とにかくクソゲーだった。確か同じマークを出し続けて無くなったら負けとか、テクニックも何もない感じだったと思う。正直、俺はこの時点でもう一刻も早く帰りたくなってたけど、その気持ちを吹き飛ばす言葉が台所の方から聞こえてきた。母親である。

 

「さあ、デザートが出来たよ! みんな、座って!」
「えー! デザート! やった! デザートだ!」

 

にわかに盛り上がる子どもたち。俺も例外じゃなかった。デザート! クリスマスのデザート。ケーキである。それしかない。一択である。他に選択肢が存在しない安心感がすごかった。思わずホッとする俺。プレーンのスパゲティ食わされただけじゃ、あまりにもクリスマス感がなさすぎる。机に座り。車座になる子どもたち。やがて運ばれてきた大皿。


よっしゃ。食うぜ。ケーキ! いただきます──!


……大皿には、スパゲティに砂糖がかかったやつが載せられていた。マジである。これがデザートなのかどうかがそもそも審議対象なのだけど、問題なのは砂糖の量がそんなに多いように見えなかったことだ。またもプレーン。おかわりである。それでも、俺以外の全員はめちゃくちゃ喜んでいた。テンションが上がった小さい子がキャーッと奇声を上げる。そしてその子が着てるのは小1のときにY君が着てた服だった。袖の所が鼻水で光ってる。


そこで俺ははっきりと理解した。天啓と言っていい。気づいて見れば当たり前だった。俺は明らかに恵まれていた。ベビーチョコも1人で食べられる。ケーキは普通に食えるしパスタにミートソースは余るほどかけてもらえる。というか父親も婆ちゃんも働いてるから二馬力なわけで、しかも一人っ子だ。ちゃんとしたトランプどころか、ファミコンまである。コロコロもボンボンも毎月買ってもらえるし、進研ゼミも入ってる。


うちは金持ちじゃない。でも、決して貧乏じゃなかった。その上、一人っ子の長男ということでかなり優遇されているというのが、小3にしてすっかり理解できた。


いただきます。言うが早いか大皿にフォークを突き立てるY君。早くしないとなくなっちゃうぞーと、兄弟を煽る。戦場だった。小さい子。ちょっと大きい子。全員が我先にと手をのばす。今回はミートソースとは違い、個別のお皿じゃなくて大皿から全員でつつくタイプだ。あ、これはほっとけば無くなるぞ、と思った。喰わなくていい。これはちょっとラッキーだ。安堵して見てると、Y君が笑顔で言う。食べなよひろしくん! 促されて仕方なくフォークを伸ばす。くるっと一巻きだけして口に運ぶ。クリスマスの魔法でめっちゃ美味しかったりしないかなと思ったのだけど、まあ味もそのまんま、スパゲティに砂糖ぶっかけた奴だった。


大皿のスパゲティは、あっという間に無くなった。


静かな気分だった。分かってみればなんてことはない。ここはそういう家だ。自分の家や常識を基準に考えるからおかしな事になるだけで、そういうものだと思えばスッと入ってくる。食を終えた兄弟たちが座敷の方で始めた良くわからない遊び。これも無理に入っていく必要はない。もう一回トランプやる? と聞いてくるY君。これにも無理に付き合う必要はないのだ。ううん。やらない。そう答えて、スッと包みを差し出す。


「ん? なんだい」
「プレゼント。クリスマスだから」
「えー! プレゼント!? ホントに!? みんな! プレゼントだって!」
「やったー! プレゼントだ! ちょうだいちょうだい!」
「キャーッ! キャーッ!」


Y君へのプレゼントのつもりだったけど、いつのまにか兄弟全員へのプレゼントという事になった。全然OKである。みんなで使ってくれよ。奇しくも、俺が買ったノートは「ケロケロケロッピ」の奴だった。妹たちが狂喜乱舞する。あげてよかった、と思った。凪いだ気持ちである。子供というのは本当に残酷なもので、ときに平気でこういう振る舞いをする。要するに、貧乏のなんたるかを理解した俺は、この時「施し」を与えた気分になっていた。今でこそこの態度がどれだけ不遜なものかは分かるのだけど、当時の俺はちょっと「良いことをした」気分になっていたのである。Y君は気づかない。兄弟たちも気づかない。ただ、母親は気づいたんだと思う。だってY君の家には、その後二度と呼ばれることはなかったのだから。

 

 

スパゲティに砂糖かけて食ってたくせに!!

 

焼肉の匂いだ。高級な佐賀牛。油が滴る。タレじゃなくて塩で食う焼肉を食べたのは初めてだった。あまりの旨さに天を仰ぐ。キンキンに冷えたビール。目の前にはY君が居た。そしてその口から飛び出したのが、冒頭の言葉である。


「俺らもいよいよここまで来たな」


なんとなく、しんみりした気持ちになった。貧乏。子沢山。そして貧乏。さらに貧乏。思えばY君の幼年期は貧乏との戦いだった筈だ。彼がどのタイミングでその事実に気づいたか知らないけど、ひとつだけ確かなのは、ある時から彼が急にグレたという事実である。無邪気にベビーチョコを配ってた明るいお兄ちゃんから、金髪のヤンキーにジョブチェンジだ。俺はこれをドロップアウトだとは思わない。何故なら彼は元から持たざる者だったからである。なんせ配られたカードが悪すぎた。いよいよここまで来たな。20代の若者があぶく銭で焼肉を食いながら放った一言ではあったが、彼の場合は少々意味が違った。ホントに、ようやくである。ようやく、美味いものが食えるようになったのだ。


「俺らって言うなよ。お前だろ。スパゲティに砂糖かけて食ってたくせに!」


言いながら、俺は何だか泣きそうになった。持たざる者だろうとなんだろうと。人生の配牌が悪かろうとなんだろうと。同じ土俵で、自分の才覚で飯が食えるこの時代、そしてこの世界を、本当に好ましく思った。パチプロに出自は関係ない。誰だってなれるし、誰だって肉が食える。これほど平等な世界はそうそうない。


「あれなぁ。スパゲティに砂糖かけたの。本当にごちそうだったんだよ。美味しくてさぁ。滅多に出してくれなかったんだけど──。こないだ家で、作ってみたんだよ。久々に食べたくなって。そしたらさぁ……」


お互い若くて世間知らずだった、ホールも今よりずっと元気で、夢も活気もみなぎっていた頃の話である。この数年後には5号機の時代が来てあっさり専業を引退することも、さらに6号機が出る頃には結婚もして子供が居て、パチプロ以外の仕事でそれなりにちゃんと生活できるようになってることも。この時の彼はまだ知らない。


──ただの、砂糖をかけたスパゲティだったよ。


笑いながら言うY君の言葉に、俺も釣られて笑ってしまった。

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