ガリぞうが確実に高設定をツモれる「持ち駒」とは?【収支日記#59:2021年5月11日(火)~5月17日(月)】 (3/3)
5月16日:畠山耕太郎さんと私
今日は嫁とユニクロに行った以外、漫画の原案執筆に費やした1日でした。(嫁からもよく気をつけるよう言われるのですが、私の衣服は普段着・出演用の何れも大体がユニクロでまとめられていて、皆様ご存知の通り容姿への気遣いがほぼありません。)
漫画の主人公としての私の遍歴は今年で20年になります。
・BET ON(主人公:ガリぞう、原案:瀬戸嶋勝、漫画:畠山耕太郎)2001年~
・プロスロ-パチスロで勝つための王道-(原作+主人公:ガリぞう、漫画:畠山耕太郎)2003年~
・プロスロNEXT(原案+主人公:ガリぞう、漫画:畠山耕太郎)
私の漫画を描いてくださっている畠山さんとは20年以上の付き合いになります。そこで今回は、不定期で進めている「〇〇と私」シリーズの1つとして、長いことタッグを組ませてもらっている漫画家さんの畠山耕太郎先生についてお話ししていきます。
畠山さんのお話をする前に、まずは彼の紹介から始めます。畠山耕太郎先生は1986年に講談社からデビューし、ちばてつや賞(漫画家の新人賞)も獲得された事のある岩手県在住(漫画開始当時は宮城県仙台市在住)の漫画家さんです。
私と彼との出会いは2002年10月8日。漫画「BET ON」の時は一度も会う事のなかった畠山さん&編集長と札幌で初面談しました。当時の日記を読んでまず驚いたのは最後の一文に書かれた「本日の収支:+33K」でしたが(大事な面談の日まで稼働してんのかよっ!的な意味で)、当時の畠山さんから聞いた言葉は1つ1つ鮮明に覚えています。
畠山さん「男は家にイノシシ獲って帰ってくりゃ後は何でも良いと思ってる。」
正に古き良き男の印象でした。確かに畠山さんはペン1本で生計を立てているので、原稿料と言う名のイノシシを獲る為に日々頑張ってきたのでしょう。
彼から直接聞いた同期の漫画家さんは、遊人さんや福本伸行さんだそうです。お酒を呑むと、いつも遊人さんをベタ褒めします。「遊人は画力がず抜けてるし仕事にも真摯で、アイツのアシを何度かやった事あるけど一度もこっちに顔を見せず延々と描き続けてたわ」みたいな話はお酒の席で何度も聞かせて頂きました。
他、お酒の席でよく聞くのは、陸前高田大使の話です。畠山さんは長年仙台市に住んでいましたが、元々は陸前高田の出身で、漫画家になってからは故郷の大使も務めているんだとか。お付き合いされている女性も陸前高田の方で、毎月10日前後に私の漫画を描きあげて提出したら2泊3日で彼女さんが仙台に出てきて愛を育んでいるそうです。酒の席の話題で陸前高田の名前が毎回出てくる辺り、ふるさと愛を忘れない律儀な印象があります。
畠山さんとの漫画「プロスロ-パチスロで勝つための王道-」は好評を博し、間もなく単行本が発売される事に。この単行本第1巻は爆発的に売れ、同じ出版社から同月に発売された「アカギ」をも上回る実売を見せ、約3万部がアッと言う間に完売したそうです。
単行本が発売されると印税が発生します。基本的に印税は売上総額の10%とされ、これを原作と作画の2人で分けられます。これはこの業界だけの話かもしれませんが、原作と作画では圧倒的に作画担当の方が多くの印税を振り分けられます。当時の竹書房が定め振り分けられた印税も当然ながら畠山さんの方が圧倒的に多かったのですが、単行本の第1巻が発売された後に畠山さんから竹書房側に一報があったそうです。
畠山さん「この単行本はガリのおかげで出せたんだから次回以降はアイツにもう少し多く振ってくれ。」
私に多く振ると言う事は、イコールで畠山さん自らの取り分を減らすという事になります。そんな申し出を漫画家さんから受けた事は過去に一度もないと当時の編集長も言われていました。その後、第2巻~第4巻まで出版契約書に記される私の印税率は本当に上がっていました。(単行本が発売される際は作家と出版社との間で出版契約書という書類が交わされます。)
金額にしてみればさほど大きな額ではありませんが、その畠山さんの気持ちが「この心優しい漫画家さんと組めて本当に良かった」と心底思わせてくれました。
畠山さんは私なんかと比べ物にならないほど仕事に真摯な方です。どんなに忙しい時期でも原稿を落とした事(締切を守れず病欠等の名目で不掲載になる事)が一度もありませんでした。しかし、そんな彼も「プロスロ-パチスロで勝つための王道-」を納期前までに提出できず、一度だけ不掲載になった事があります。
それは、2011年3月。東日本が未曽有の大震災に見舞われた時でした。前述の通り畠山さんは被災地の宮城県仙台市在住でした。地震直後から1ヵ月ほど避難所生活が続き、漫画を描けずに我々の「プロスロ」は非掲載に。畠山さんからは謝られましたが、日本中の誰もが知っている理由での非掲載ですから全く問題ありません。それよりも彼女さんが無事だった事に安堵した記憶の方が大きいです。
そう、私も面識がありよく知っている彼女さんは、毎月10日前後に仕事を終えた畠山さんの下へ陸前高田から出てきて2泊していたのです。当時の陸前高田の被災状況は皆様もご存知の通り。畠山さんの作画があと1日遅れていたら、むしろ私の原作提出があと1日遅れていたらと思うと、今でも背筋が凍ります。
その1ヵ月後。非常事態になってもお茶目な畠山さんから、こんなメールと共に1枚の写真が送られてきました。
畠山さん「陸前高田の実家に帰省して一服やってます。」
茶の間の辺りだそうです。当然ながら笑えませんし、長年お付き合いさせてもらっている私ですらどうお悔みを言って良いかもわかりませんでしたが、「家が流されてる俺が言ってるんだから不謹慎狩りなんか気にすんな」という意味だったようです。本当に豪快で優しい人を相棒に持てて私は幸せですし、これからも色々な事を彼から学んでいきたいです。
そんな私は畠山さんの生き様を見習い、今も「男はイノシシ(と言う名の高設定)を獲って帰ってくりゃ後は何でも良い」と思うようにしています。これを容姿に気遣いができていない言い訳とさせてください。
追伸。畠山さんとタッグを組んでいる漫画は現在もガイドワークス社で「プロスロ-NEXT-」として掲載されています。隔月(奇数月)11日発売です。(今月のみ12日で、ちょうど昨日7月12日に発売されています。)見かけたら手にとってください。そして、興味を抱いたら読んでみてください。
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