旧規則機の撤去期限を守らないとどうなる?POKKA吉田が「風営法20条1項」を解説

旧規則機の撤去期限を守らないとどうなる?POKKA吉田が「風営法20条1項」を解説 eyecatch-image

わかりにくい話と思うけれど

 

旧規則機の撤去期限が近付いているということで、新規則機だけの市場になることが法的に確定しているが、それについて、少し細かいことを整理しておきたい。ここの読者の方々にとって何かの参考になるとは思わないが、そういうことも興味がある人にとっては一応は参考になるかもしれない。

 

さて、風営法の体系としては、経過措置が切れた機種の取り扱いは風営法第20条1項違反となる。この条項は国家公安委員会規則で定める「設置したらダメ」な機種を設置して営業するな、と言っている。

 

その国家公安委員会規則で定めた部分が風営法施行規則第8条の「著しく射幸心をそそるおそれのある遊技機の基準」というところだ。規則改正という言葉は業界的には「遊技機の性能規制」と解されるし、その性能規制の細かい点を規定しているのは「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」の「別表各号(技術上の規格)」であるから、ここがどう変わるかというのが規則改正時は重要となる。が、実際にはここだけではなく風営法施行規則第8条の改正も伴うので、「設置してはいけない」機種の基準も変わっている。

 

この場合、経過措置が切れて新規則が完全に適用されてしまうと旧規則機は「新しい施行規則の基準に該当していないことを誰も担保していない」ということになる。通常の新規則機は新規則下での型式試験に適合したことで該当していない(つまり設置OK)となるのだが、旧規則機の場合は新規則下での型式試験の適合がない。つまり施行規則の基準に該当しており、設置そのものが風営法第20条1項違反ということになるわけだ。

 

規則改正のときは、経過措置が設けられることが一般的。旧規則下のものが当時の検定等の有効期間内は新規則(施行規則)を適用しない、というものであり、これが昨年規則附則改正で1年間延長されたもの。それとは別に既に経過措置のない機種に対して猶予を、という施策も実は前回の改正に引き続き今回もやっている。

 

警察庁は3年前に現行規則(つまり新規則)が施行されたとき、適宜の措置というものをやった。これは新規則施行時に直ちに違法となる状態の機種のうち、特定の機種(甘系、羽根系、RTなしノーマル系など)については違法状態ではあるものの、しばらく取り締まらないということである。前回の改正時(2004年施行時)は「激変緩和措置」と呼んでいたが同じようなことをやっている(激変緩和措置については、機種を限定せず一律猶予)。

 

ただし、適宜の措置はとっくに終わっている。ということは経過措置が切れた場合は取締り対象となる。

 

風営法第20条1項というのはちょっと変わっており、行政処分の量定としてはかなり重い。基準期間でいえば3か月間の営業停止命令相当である。風営法でのぱちんこ営業者に対する営業停止命令の最長期は6か月であり、停止命令の重さで言えば上から2番目。かなり重い違反ということになるが、実は罰則規定がない。このため、刑事事件として立件されることはない。

 

このペナルティ体系が原因なのか、なかなか風営法第20条1項違反の取締りがやりづらい。実は遊技くぎ問題のときも回収撤去リスト掲載機種はこの違反に該当すると解されていたが、期限を超えて設置していたところにこの違反での行政処分が打たれた形跡はなかった。

 

遊技くぎ問題は検定型式と実際の設置機種のくぎの状態が異なる可能性がある、ということでのこの解釈だったので、解釈上違法だと断定することに警察側が踏み込めなかった可能性がある。仮に行政処分を不服として処分の取消を求める訴訟を提起されたとき、警察(公安委員会)側が負ける可能性が0とは言えないということだろうか。

 

旧規則機の場合はそれよりは解釈はかなりしっかりしている。かなり難しい話だとは思うが、風営法は「設置してはいけない機種を設置して営業するな」という法体系である。そして「設置してはいけない基準に該当しない」ことを遊技機ごとに保証したのが「認定」となる。

 

しかしそれではすべての機種を認定していくということで各警察本部の仕事が無茶苦茶になる。だから「技術上の規格に適合している」と設置してはいけない基準に該当しない、という体系を作り、その「性能」について「検定」している。イメージとしては「認定」が「検定」よりも法体系上は上位にある。要するに「設置してはいけない基準に該当するかどうかの手続きを経たかどうか」が風営法上は最も重要ということになるわけだ。

 

いわゆる「Bモノ」というのは、無承認変更か変更承認不正取得ということになる。これは「機種性能を勝手に改造した」か「正規の手続きを経ていない機種を正規の手続きを経たと嘘をついて承認を得た」という話だ。ここにも「最も重要な設置してはいけない基準に該当しないことを手続き上経たかどうか」という考え方があるわけだ。勝手に改造した性能の内容が基準に該当しない可能性はあるけれど、そうであっても無承認変更は違法。しかもこちらは罰則規定があるため、営業者の逮捕も可能である。

 

業界関係者にとって、風営法上最も重い罪は「無承認変更」である。が、本来の風営法上の最も重い罪は「無許可営業」だ。前者は1年以下の懲役か100万円以下の罰金かその併科。後者は2年以下の懲役か200万円以下の罰金かその併科。倍も刑罰が異なるが、後者を業界関係者は気にすることがない。なぜなら「無許可でぱちんこ屋を営業する者」を我々はぱちんこ業界関係者とは呼ばないからである(たとえば闇スロなど)。

 

この無許可営業については、偽りや不正で営業許可を受けた場合も同罪になっている(無承認変更と変更承認不正取得の関係と同じ)。つまり「正規の手続きを経たかどうか」ということが担保されていない時点でNGというのが風営法のぱちんこ営業に対する規制の考え方の基本的枠組みということになるわけだ。

 

だから、経過措置が切れた旧規則機が期限を超えて設置されていた場合、少なくとも当該地域の警察本部は施行規則の基準を満たすかどうか、裁判になったときに負ける可能性を考える必要性がほとんどない。少なくとも遊技くぎ問題のときよりは心配はない。それでも取り締まりづらい違反には違いないが、一応は当該旧規則機の射幸性が低かったとしても警察にとっての敗訴リスクはかなり下げられることになる。

 

だから、旧規則機はいずれ必ずなくなっていく流れである。各地の警察本部が期限切れ設置店を直ちに行政処分するかどうかは別問題であるが(これは例えるならすべての交通違反を常に取り締まっているか、という話に似ている)、設置を続ければいずれ取り締まられることは確実である。

 

だから仮に旧規則機を残したいと思った場合、手段は2つしかない。1つは「取締りをしばらく猶予する」と警察が決めること。しかし今回の規則改正では既に適宜の措置を実施しそれもとっくに終了していることから、これを考えることは難しい。実は前の改正時の激変緩和措置のとき、特定地域だけのその期限を大幅に伸ばしている前例があるのだが、それは遊技機供給の問題などのしかたがない問題があった例外である。

 

となるともう1つは経過措置の再延長しかない。が、こちらはあり得ないということは申し上げておきたい。昨年の延長時は業界6団体が警察庁に陳情書を出して協議もし、理由も適切だったことから実施された。現在はそのような陳情はないし適切な理由もない。というか、既にかなりの旧規則機の経過措置が切れてしまっている現状では、今更延長しても伸びる型式数は極めて限定的となる。だからこれは常識的にはあり得ないと考えられる。

 

ということは、「経過措置が切れたらすべてが新規則機になる」ということが結論として確定しているということだ。

 

今回のこの内容を「何を書いてるかよくわからない」という人は多いかと思う。施行規則の基準と認定検定規則の別表と、それらを認定と検定に対応させて法体系上は認定を上位にしながら実務上は検定を必須としてこれからスタートさせ、許可認容の権限を各公安委員会と規定しながら検定の条件である型式試験を国家公安員会の所管にしている、というかなりややこしい法体系になっているのだからこれはしかたがないのだ。私がわかりにくく書いているのではない。「内容がわかりにくい話を私が記事にしている」からわかりにくいわけだ。

 

昭和60年に施行された風営法の取締法から「適正化」法への大改正。このときに検定や認定制度が法体系に組み込まれた。これは遊技機の技術革新が日進月歩の勢いだったことで、ハイテク遊技機への許可認容へ警察が対応しやすいようにという、遊技機メーカーの利便性を図ったものである(それは昭和59年の法改正成立時、附帯決議に記されていたと思う)。しかし当時は画期的で合理的であったとしても、そこから半世紀近くこの体系を続けていけば、規則改正を繰り返すとこのようなややこしい状態になるのも当然である。すなわち、制度疲労がかなり溜まっているのだろう。本来「ぱちんこ業界は今後、どのようにあるべきか、法令等の規制はどのようにあるべきか」という話は、この制度疲労をどうするか、という話を前提に各論をすすめていくべき、というのが私の考えである。

 

以上、経過措置も気が付けばおわる時期が近付いたので、あえてこのようなわかりづらい話を取り上げた次第。

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  • 1:2021-11-20 14:25:08旧規則機撤去は、2021年11月末ですね?

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