余暇進行政講話【POKKA吉田コラム #48】

POKKA吉田 プロフィール

業界紙「シークエンス」の編集長という立場を持つ、ぱちんこ業界専門のフリーライター。独自の目線でぱちんこ業界に関する著作物を数多く出版している。

毎年、11月に開催されることが多いホール5団体の一つである余暇進の秋季セミナー。

このセミナーには警察庁から生活安全局保安課のぱちんこ業界担当課長補佐がやってきて講話するのが慣例だ。

今年も例に漏れず、齊藤課長補佐が講話している。

 

この中で触れられたことのうち、ぱちんこ業界的には新しい話と映ったのがATMの話だ。

 

ホール店内にATMを展開する事業をしているトラストネットワークスという会社がある。

というか、ぱちんこホールの営業所内に銀行ATMを設置しているのはこの会社だけ。

齊藤課長補佐の講話の中では、この営業所内ATMについて「ATM設置を禁止すべき、撤去すべきとの指摘にどう応えていくのか、営業所内のATMについて業界としてよく検討されるべきものと考えています」とかなり具体的に言及した。

しんぶん赤旗ではもう何年も前からお馴染みの「トラスト社のATM批判」だが、近年は、依存文脈で赤旗の主張を引用されることが増えており、たしかに批判が多いものではある。しかし、トラスト社は自社のATMにさまざまな制限(利用上限3万円/日など)を設けており「抑制機能付き銀行ATM」と謳っており、依存文脈でもむしろ「対策している」というスタンスである。

依存問題についてはいろいろ思うところはあるが、具体的な「リスクだったり対策だったり」というものの(費用対含めた)効果については、専門家が判断するべきことだろうとは思っている。だから店内ATMについてどのような問題性があるかは専門家の評価に委ねたい。

ところで、ぱちんこホールというものは、全国いろんなところに大きな店も小さな店も存在している。

ぱちんこホールの近隣というか、たとえば隣近所にもいろんな店などが立地してい

る。

その中にはATMを備えているコンビニもあれば、消費者金融もある。

たとえば、あるビルの2階以上はすべて消費者金融業者が入居するところの1階がホールという立地も見たことがある。

こういうものは、なかなか規制することが難しい。

余暇進の行政講話におけるATMは「営業所内におけるATM」という表現になっている。

これは、「ぱちんこ屋」として「営業許可を受けたところ(すなわち営業所内)」に「設置されている銀行ATM」に限定されるものだ。

営業所内ATMは、今のところトラスト社以外に事業者がいないのですべてトラスト社のATMである。

 

仮に行政講話に反応して、各ホール団体が「営業所内ATMを撤去する」と決めたとしよう。

この場合、トラスト社はぱちんこホール向け事業が壊滅する。

それが依存対策になるというのであれば、警察庁はギャンブル等依存症対策推進本部の中でも「ちゃんとした指導をぱちんこ業界にやっている」と胸を張るかもしれない。

しかしぱちんこホールの「隣近所」にはいろんな店がある。

営業所内のATMがなくなったところで、おそらく1分も増えない所用時間で普通のATMが近所にあるという立地はものすごく多い。

しかもこの場合、トラスト社のATMではないので利用制限もないATMだ。

「営業所内の1日3万円制限があるATMがなくなって、近ければ営業所から徒歩数秒から数十秒のところにある無制限ATMは存在し続ける」という状況で、依存対策もへったくれもない、というのが私の考えである。

 

というか、トラスト社のATMについて細かいことを本稿で言うつもりはない。

今回の行政講話にあるトラスト社のATMに対する物言いを見て、今の警察庁の優先事項が垣間見えるということを指摘しておきたいのだ。

それは「政府(ギャンブル等依存症対策推進本部)内で『警察庁としては依存対策に努力しているというポーズを見せる』ということをものすごく重視している」ということである。

どうせ、政府、特に対策推進本部にかかわるエリートや政治家にぱちんこホールの現場感なんてわかるはずもない。

だから、「ぱちんこホールの営業所内の銀行ATMについて、ぱちんこ業界にどうするか考えをまとめろ、と指導している」と報告されれば「努力している」というようにみなされるかもしれない。

ここの読者も私も現場感はあるわけだから、これがとても変な話ということはわかる。

営業所外だが同一建物内のコンビニにATMがあるという立地の店も多いのだから「トラスト社のぱちんこホール向け事業がなくなっても、ATMにはさほど困らない」ということを我々はわかっている。

 

深刻な依存問題に直面している人にとっては、ATMの有無はその依存行動に対しての利便性には違いない。

だから専門家の評価に委ねたいのだが、私が言ってるのは仮にトラスト社のATMがなくなったとしても代替はいっぱいあって、しかも代替のATMは制限がないということだ。

アルコール依存に苦しんでいる人にとって、アルコールは避けなければならないものだと思う。

しかしだからといって「酒類販売店の近所に酒屋はあってはいけない」とは政府は言わない。

私は依存問題について、専門知識があるわけでもないので、具体的なリスクだったり対策効果だったりの評価は専門家に任せる。

しかし「木を見て森を見ず」という政策であるかどうかは、専門知識がなくてもわかるのだ。

 

こんな嫌事を先月20日の余暇進秋季セミナー以降、いろんなところで言い続けてきた。

元は齊藤課長補佐が愛知県警から警察庁保安課にやってきた直後(8月)に、最大のホール団体である全日遊連にいきなり指導したのが始まりである。

ただ、全日遊連に対する指導はオフィシャル情報ではない。

余暇進秋季セミナーで言及したから、オフィシャル情報となって、全日遊連幹部以外の業界関係者も知るところとなった。

私の想いは本稿で示したとおりだが、おそらく警察庁としては、トラスト社のATMについて、今後も重要課題として取り扱っていくことになる。

次、警察庁がぱちんこ業界所管の方針を講話するのは来年1月の全日遊連全国理事会。

これも毎年恒例だ。

イレギュラーなことがない限り、1月の全日遊連理事会には保安課長がやってきて講話する。

そのときも「営業所内ATM」問題が取り上げられることになる公算が高い。

 

最近、警察庁のぱちんこ業界所管がポンコツと感じることが多くなっているのというのが私見だが、それは本稿の内容でなんとなく読者にも伝われば幸いだ。

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