奥さんがパチンコとタピオカが嫌いになった理由とは!?しゃくれたAちゃんに隠された秘密をしゃくれライターあしのが綴る、なんだかちょっと寂しいお話

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嫁はいかにしてパチンコが嫌いになったのか。『横にしゃくれたAちゃんの顎に隠された秘密』とは……

 

顎がしゃくれているのはイケメンや美人の証である。というと「お前がしゃくれてるからだろうが」と言われるのだけども、そんなことはない。例えば綾瀬はるかはしゃくれている。しかし美人だ。牧瀬里穂もしゃくれている。だが美人である。小栗旬も、要潤も、イケメンは皆しゃくれているのだ。すなわちシャクレは美形。これにてQED。証明終了だ。というか個人的見解ではジャニーズ事務所の所属タレントは8割くらいがややじゃくれかそれに準ずる微じゃくれだと思う。AKBだってまゆゆを筆頭にしゃくれ勢がしっかりと存在するし、もはや反駁の余地はミリもない。いいかい。しゃくれは美形なのだ。

 

行くぜプレス!(掛け声)

 

……いや行けない行けない。失礼しました。今回は「顎」の話をちょっとしたいのだけど、それだけ切り取るとパチンコとかパチスロに関係ねえじゃねぇかと誰しもが考えると思うのね。ところがドッコイ。これが関係あるのです。ただ、前置きとして「しゃくれは悪くないよ」という前提がどうしても必要なのです。だって本当に馬鹿にしてないから。俺だってしゃくれてるし。だからこれをご覧のみなさまでもししゃくれてる人がいるのなら、気を悪くしないでね。繰り返すけど俺もしゃくれてるからね。なんなら俺の方がしゃくれてるから。へへ。

 

あ、あけましておめでごうございます。あしのです。今年もよろしくね。それじゃ本題。改めまして。……いくぜプレス!

 

 

いろんな所にトラブルを抱える女性の話。

 

うちの嫁さんはパチンコやパチスロが嫌いだ。最近は俺による熱心な布教活動により徐々に軟化しつつあるけども、出会った頃はパの一字で拒否反応を示すほどのアンチであった。それでよくライターと結婚してくれたものだと思うのだけどもそれは置いといて、やっぱり物事を「嫌い」と言い切るのにはそれなりの理由がしっかりあるらしい。俺は常々、嫁がいかにしてパチンコ・パチスロ嫌いになったのかの源流を探っていたのだけども、最近ふとした事でそれが判明した。酒の席での冗談みたいな話である。嫁の口から飛び出してきたエピソードの内容はこうだった。

 

──キーになるのは嫁が20代前半の頃に出会ったという、Aちゃんという女の子である。

 

Aちゃんは嫁より5つくらい年上の人だったらしい。当時勤めていた会社に、後輩として入ってきたとの事。年上の後輩。嫁の口ぶりからしてちょっと面倒な存在だったのは簡単に想像できたけども、どう面倒だったのか。

 

「物覚えがめちゃくちゃ悪くてさぁ……。マイナス伝票を切る時には▲を付けて下さいって何回言ってもわからないの」

「へぇ……。ちょっと残念なひとだったんだ」

「残念なひとっていうか……。なんかおかしな人だったのよね」

「見た目は? どんな子だったの?」

「それがねぇ……」

 

すっごいしゃくれてた。との事。ただのしゃくれではない。すっごいしゃくれである。

 

「どのくらいしゃくれてたの?」

「どれくらい……。うーん……。ラクダくらい」

「ラクダってしゃくれてるっけ」

「わかんない……。ラクダって、ほら、もいんもいんって食べるじゃん」

「もいんもいん……。ちょっとYouTubeで確認していい?」

 

動画でラクダが餌を食べてるところをみると、たしかにもいんもいんしてた。

 

「あー……。これはしゃくれっていうか……。なんだろう。顎が横に動いてるね」

「そう。横に動いてたの」

「なんでそんなことになってるの。Aちゃん」

「それがねぇ……。何から説明しよう。ああ、なんか気が重くなってきた」

「気が重く?」

「うん。思い出したらすっごい落ち込むのよね。Aちゃんの話」

「なんだい。気になるな」

「聞きたい? じゃあ……。とにかくね、Aちゃんは凄い馬鹿なひとだったの。馬鹿っていうか、『何も覚えない人』だったのね。仕事上のルールも。流れも。約束も。何十回言って、やっとひとつ覚える。だからいっつも怒られていたし、すごく嫌われていたの」

「その時点で結構気が重いねぇ……」

「Aちゃん年上だし、わたしは気を使ってたのよ。マイナス伝票も何回も。何回も──。毎日毎日言って。▲つけてくださいね。▲つけてくださいね──って。言ってたのよ」

 

嫁の名誉のために付記すると、彼女は結構辛抱強いタイプだ。思いやりもある。そりゃあ完璧な人間なんていないので決して聖人君子じゃないけども、それでも一度や二度の失敗でボロクソに言う女性じゃない。よっぽど何回も同じ指摘を繰り返してきた過去があるのだろうなと思った。

 

「でね。ある時イライラしてたのもあって、怒っちゃったのよね。『何回言えば分かるんですか。マイナスは▲を付けて下さい。付けないとマイナス伝票かどうかわからないから違算が出るんです。なんでそんなこともわからないんですか。何回言えば分かってくれるんですか』って」

「ンー……。Aちゃんはどうしたの?」

「『そんな事言ったってしょうがないじゃないですか! 覚えられないものは覚えられないんです!』って──……」

「逆ギレ……!」

「それからわたし、Aちゃんの事が大嫌いになったのね。その頃になるとAちゃんはみんなから相手にされてなくて。孤立しててさぁ……」

「よく続けてるな、Aちゃん。その仕事」

「それがね。借金があったんだって」

「借金……」

 

曰く、Aちゃんの借金に関してはどこから漏れ聞こえたのか分からないものの、いつのまにか社内で広く知られる公然の秘密になっていたそうな。

 

「何の借金なの?」

「分からなかったのよ。ただ大きい借金があるって。それだけ」

「大きいってどれくらいよ」

「分からない。本人に確認取ったわけじゃないから」

 

一度Aちゃんの事が嫌いになってしまった嫁は、Aちゃんとの接触を極力断つようになったそうな。それでも一緒の職場で働く仲間。イヤでも関わりはある。ある時。Aちゃんと職場で作業をしてた時の事だ。屈んで作業するAちゃん。嫁が内容を説明していると、胸元に違和感があったらしい。

 

「なんかAちゃん、キャミソールのサイズが合ってなくてお胸の所がカッパカパでさ。しゃがんでるのを上から見下ろすとめっちゃ乳首見えてて。なんかもういたたまれなくなって。しかもさ、それがブラックタピオカみたいだったのね……。それでその日からわたしタピオカ食べられなくなっちゃって」

「うーん……。なんとも言えねぇ話だなぁこれは」

「会社でさあ、みんなでランチに行く時もね。Aちゃんの前に誰も座りたがらないのよ。食べ方がなんか、もいんもいんしてて。もしかしたら口がちゃんと閉じなかったのかも知れない。あからさまに嫌がってる人も居て、Aちゃんだけランチに呼ばれなくなったり」

 

流石におかしい。と気づいた社員も居たようだ。借金。物覚え。顎。タピオカ。いやタピオカは関係ないが、前者3つには何かしら理由がありそうだ。

 

「マイナス伝票の事で怒ったあと。しばらくしてAちゃんは会社を辞める事になったのね。これも自分で辞めるというより、上から言われたみたいで」

「まあ……。そうなるよねぇ」

「うん。最後の日かなぁ。みんなで形だけお別れの挨拶してさ。終業時間のあと、壮行会とか送別会とか一切なしで。みんなスッと、お疲れって。帰っていって。わたしも帰ろうとしたんだけど、Aちゃんに呼び止められてさ」

 

──ぺこりと頭を下げるAちゃん。手に持った四角い封筒を差し出す。

 

「手紙を書いたので、読んで下さいって」

「……怖いな」

「うん。怖かった」

「受け取ったの?」

「受け取った」

「読んだ?」

「うん。手紙にはね──……」

 

 

妻はいかにしてパチンコ・パチスロが嫌いになったか。

 

キティちゃんだか何かの印刷がしてある便箋には誤字脱字が満載のたどたどしい文面が綴られていたそうな。

 

「まずはごめんなさいって。何も覚えられなくてごめんなさい。いつも迷惑をかけてごめんなさい──」

 

──わたしには年下の彼氏がいました。

 

彼氏には夢があって、働いていませんでした。彼氏の趣味はパチンコでした。生活費もパチンコ代もわたしが出していました。わたしは満足していました。ずっと一緒にいたいと思っていました。ある日けんかをして、彼氏が出ていきました。彼は帰ってきませんでした。わたしは彼のことを待っていました。しばらくすると、わたしの部屋に借金の督促が届くようになりました。いつだったか、彼氏が夢を叶えるためにお金を借りに行った時、連帯保証人になったのを思い出しました。いくら借りたか覚えてません。お金はパチンコに消えていました。

 

「ちょっとまって。それマジの話?」

「ほんとの話よ。未だに当時の会社の人にあった時、Aちゃんの話になるもの」

 

正直に言うと、借金よりも、その紙が『もう彼氏は帰ってこない』と言っているようで、それが悲しかったです。だから、死のうと思いました。この辺は記憶があまりないのですが、どうやらわたしは部屋の窓から飛び降りたようです。気づいたら病院のベッドの上で、時間もすごく経っていたようでした。何が起きたか分かりませんでした。鏡をみたら、顎が曲がっていました。左手があまり動かなくなっていました。物覚えも悪くなりました。会社のみんなに迷惑をかけてごめんなさい。

 

「一緒に働いた半年間、楽しかったです──って」

「オウフ……。えー……。そんなドラマみたいな話あるン……? 作った?」

「本当だってば。それでね、ああ、そうだ。わたしそれから凄く怒ったの」

「何に対して?」

「パチンコに対して……。というか、パチンコを打つ人に対して」

「えー……。マジで。そんな理由……?」

「そう。当時ねぇ、わたしが22とか。23とか。それから今まで、タピオカとパチンコが嫌いで……」

「タピオカは許してやってくれよ……。まあ分かるけど」

 

Aちゃんのその後は分からない。知りたいとも思わないそうだ。そりゃあそうだろうな、と思った。どう転んでも不幸な未来しか見えない。そして最悪な事に、なにも助けてあげられない。きっと友達にもなれない。だから、知る意味がない。酒を飲む妻。奥歯で苦いものでも擦り潰すような顔をしていた。

 

「久しぶりに思い出したわよ。Aちゃんの事。だからひろしの仕事も、最初聞いた時、ちょっと引いたのよね。あー、この人パチンコ打つ人なんだって」

「顎もしゃくれてるしなぁ……」

「顎は別にいいじゃない。Aちゃんのは横じゃくれだったから問題だっただけで」

「横じゃくれ……。新しい単語だねぇそれは……」

 

パチンコと借金。一時期は掃いて捨てるほど耳にした話である。今のAちゃんの話だって、きっと探せば類似の話は腐るほど出てくるんだと思う。貸金業法の改定でいわゆる『総量規制』が敷かれたのが2006年。嫁の話から逆算するに、あと数年だった。もしあと数年だけその彼氏さんとやらと出会うのが遅ければ、もしかしたら違った未来があったのかもしれない。例えば俺と嫁と並んで楽しくパチンコを打つ未来が。

 

「パチンコが無かったら、その彼氏さんはちゃんと働いてたのかね」

「さあ……。ダメじゃない?」

「ダメかね」

「ダメでしょ」

「ダメか」

 

──あるいは、Aちゃんの顎が曲がらない未来が。

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