試験方法が変更となって【POKKA吉田コラム #2】

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回胴式遊技機の型式試験における試射試験の方法が14年9月16日から変更されたことはご存じだと思う。

試射試験は何種類もあるが、基本的には「出玉率の上限と下限の間に収まる」結果になればいいと思って欲しい。そこで、長時間出玉率試験の下限である55%(を超えること)のチェックのために「最低になる打ち方」で試験するように保通協に指示すると警察庁が明言したわけだ。

最低になる打ち方というのは、たとえば今の機械ならということで「左打ち+ナビ無視」が例示された。今のAT機は通常時は左打ち(orはさみ打ち)をさせ、AT当せん時にナビ通りに打たせる。今までの試射試験は「ランダム押し順」のチェックだったから55%下限をクリアすることができたが、今のAT機は左打ち時の出玉率はこれよりもはるかに低い。押し順ベルなどの左打ち時の払い出し枚数を極端に少なくしているからだ(しばしば枚数の多いものは強ベルだったりする)。はるかに低い出玉率の打ち方を客に強制させるのは、御存じペナルティだ。通常時に左打ちをしなければさまざまなペナルティが発生するため、客は左打ちをすることになる。

この「試験ではランダムに打ってるのに、実際はペナルティで左から止めさせている」という点を「脱法行為」として今回の措置に警察庁が踏み切ったのはパチスロ開発現場にとってはものすごく大きな影響がある。現在、存在するほぼ全てのAT機において、この試験方法では「確実に不適合になる」からだ。

そのままならもう適合しないので仕様を変える必要がある。左打ちでも55%下限にひっかからないようにするためには押し順分割の振り分けを変えるなりして通常時のベース(編集部注:遊技台へ投入されたメダル数に対して払い出されたメダル数の割合を示す値)を高くする必要があるが、今と比較してものすごくベース値が高くなりすぎてしまい現実的ではない。

ボーナス+A(R)Tなら、どのような打ち方でもボーナス分の払い出しは発生するので55%下限にひっかからないことも可能だが、この一世代、二世代ほど前の仕様に戻ると客が興醒めするのではないか、ということもメーカーは考えている。

さらには仕様を作り替えると、演出系も変更する必要があるわけで(出現率や信頼度など)、ゲーム性全体のバランス調整も困難になる。

さて、この件は「メーカーの脱法行為的な型式試験申請に対するペナルティ」と考えていい。さらには、天井仕様に苦言を呈し、BETリプレイ(ベルリプレイなど)を不適合にしているといい、今後の質問対応(メーカーが警察庁に技術案件の諾否を質問すること)にも多くの注文を付けていることを考えると「試験方法が変わったことでおしまい」とは「ならない」ことが明らかである。

では、どうなるか。今のところ何も明らかなことはない。これは「わかっていない」のではなくて「決まっていない」からだ。

それを踏まえて、今後の流れを簡単に想定しておく。

・警察庁が了承する自主規制を制定する(すでに日時目標等は設定された)

・その自主規制に沿った型式が市場に浸透し、自主規制以前のもの(で警察庁が好ましくないと思っているもの)が最終的に市場から減っていく

・次の規則改正でA機能(アシスト=ナビ機能)を役物と定義してボーナス扱いとする

これらが早くて2年くらい、まあ数年で推移すると現時点では考えている。

警察庁は、A(R)Tを残したいならルールを作って次の規則に盛り込めることを明言し、逆に何もしないと次の規則で残せなくなることも示唆した。要は「ルールを作れ」という話が「試験方法の変更」とともに浮上しており、試験方法の変更は既に決まったものなので、これからは「どんなルールができるか」という話が焦点となっているわけだ。

新しい試験方法は決まっているので打ち方によって55%下限にひっかかるのは絶対に採用されない。となるとボーナスなしタイプのベース値は飛躍的に高くなる。旧ノーマルAタイプ系(ジャグ系、30φなど)でもここまで高いベース値はないから、ボーナスなしタイプが出てこなくなる可能性はある。

過去に成功した「ボーナス+A(R)T」で、警察庁が懸念した天井の恩恵などを捨てた形での自主規制になるかと思われるが、このルール制定作業は難航も予想される。単純なボーナスなしAT機はまだ禁止されないが、ジャグ系よりも千円あたりのゲーム数がはるかに多いAT機は、当然ながら確率設計も低くせざるを得ず、もはや今のAT機とは別物であり、開発意欲は低いだろう。

さて、警察庁の意向を踏まえずに考えてみると、実際問題、客がこの件に反応するとすれば、意見は二つの階層に分かれるのではないだろうか。

・AT機が近い将来出てこなくなるならパチスロが終わる

・最近のAT機は無理ゲー過ぎたのでむしろ緩い仕様が出てくれればありがたい

 

ぱちんこよりは幾分か年齢層が若くなるパチスロの客。ぱちんこほど低貸島は普及しなかったが、昨年以降、5スロなどが増えてきているのは「無理ゲー」感の高まりだとも言える。

 

ということは「全てのパチスロの客にとって、今回の規制が悪いとは言えない」ということも意味する。実際、そのような客の声をいくつも直接私は聞いている。

 

試験方法の変更はもう決まったことだから、これはシカタガナイ。ならば、今後は新しいルールがどうなるかを見据えながら、今回のことを「これ幸い」と思う客層に強くアピールするようにシフトするしかないのではないだろうか。

 

ただし、今後どうなるか、何が今、正解なのかは誰にもわからない。この点も留意しながら、今後の推移を見守ることが肝要である。

 

 

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